内容説明
滅法面白い阿佐田博打小説。静かな怖さの色川短編作品。
著者等紹介
色川武大[イロカワタケヒロ]
1929‐1989。東京生まれ。幼いころから病弱で旧制中学中退後は放浪生活。雑誌記者をつとめながら麻雀に熱中。阿佐田哲也のペンネームで「麻雀放浪記」などの麻雀小説を書く。四十ちかくになって「怪しい来客簿」などで実力を認められ、「百」「生家へ」「狂人日記」などの秀作を発表、その矢先に急逝した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ジャズクラ本
19
◎「麻雀放浪記」で有名な阿佐田哲也だが、この本は私小説なので色川武大名義。色川の本は好きで時々読むが、ちくま日本文学シリーズとして刊行されているだけあってどの話も秀作揃い。色川の生きたアウトローの世界を満喫できると共にどの話も無頼に生きる男の美学のようなものが貫かれていて憧憬が胸に差し迫る。突然だが色川が晩年1ヶ月を過ごした一関にBasieというジャズ喫茶がある。そこのマスターのステレオサウンド誌寄稿文が色川の影響を色濃く受けていることに気付いた。この本を読んでいたらまたBasieのジャズが聴きたくなった2020/04/26
すーぱーじゅげむ
14
色川さんの観察眼ってすごいと思います。(準)浮浪者たちの描写でその時代その町の猥雑さが立ち上がってきました。色川さん自身は博徒で、浮浪者とはまた別のはぐれ方、でも彼らのことが大好きというのもいいです。サンゾウさんや『離婚』の妻を好きになるという懐の深さはすごいと思いました。「私たちはお互いに、助け合うことはできない。許しあうことができるだけだ。そこで生きている以上、お互いにどれほど寛大になってもなりすぎることはないのである」2023/06/19
吟遊
9
昭和らしさが色濃くにじむ。人間関係のどろどろ、とりわけ男女の情愛、そのもつれ、気紛れといい加減さ。それは色川武大が戦中・戦後の混乱期に人格形成し、それを終生、メシの種にしたという事情があるのかな、と思う。作家の作風というのは若き日の時代と、そこで触れた文化によってかなり決まるのかもしれない。2017/01/05
kozy758
8
なるほど。「朝だ、徹夜」なのか。ひょうひょうとした文体にも面白味がある。心の目と言おうか。ただ「全集」に入る作家ではないと思った。『善人ハム』『オールドボーイ』が好感がもてる。機会があれば『麻雀放浪記』を読みたい。2017/12/12
バールの様なモノ
3
再読本 色川先生の静かな文章から、静かな怖さが背中から伝わってくるゾクゾク感がたまらなく恐ろしかった。2024/04/17