出版社内容情報
時間SFの新機軸として絶賛を浴びたハヤカワSFコンテスト最終候補作ほか5篇を収録
内容説明
マナという物質により過去が書き換えられる世界を観察するため、由良芳雄は記憶保持装置のモニターとなるが―改変される現実と思いもよらぬ結末を描く、第1回ハヤカワSFコンテスト最終候補の表題作、自室の混沌と秩序を反映したミニチュア異世界が重ね合わされた男の日常「神の創造」、他人には見えない類人猿の進化を幻視する男の困惑「猿が出る」など、現代性と普遍性と奇想を兼ね備えた5篇収録のデビュー作品集。
著者等紹介
下永聖高[シモナガキヨタカ]
1975年大阪府生まれ。立命館大学産業社会学部卒。2013年、「オニキス」で第1回ハヤカワSFコンテスト最終候補となり、作家デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
みっちゃん
90
お気に入りさんの感想を読んで絶対読もう!と思った。目まぐるしく動く局面の中で、今ここにある現実と隣り合わせにあるもう1つの現実の境界がどんどん曖昧になっていく。私はその展開にぶんぶん振り回され、頭はぐらぐら…自分自身の基盤さえ揺らいでいくのを感じる。そしてあり得ない着地点。我々はどこから来て、どこへ行くのか、どこへ還るのか…最終話の主人公のこの問いに答える術を私は知らない。2014/05/07
ソラ
41
短編集。すべて良かった。特に表題作オニキスはゾクゾクした。すべての作品にifをわたっていく感があって何とも言えない良い意味での不安定さが良かった。2014/05/04
aquamarine
31
ハードディスクに上書きされるように過去が突然書き換えられる世界で記憶保持装置のモニターとなった男。設定だけでも面白いのに、途中で少しずつ雲行きが怪しくなり、翻弄された揚句ふっと自分の現実を確かめずにはいられなくなるほどどっぷり浸かっていました。この表題作「オニキス」をはじめ「神の創造」「猿が出る」「三千世界」までどれをとっても満足いくものです。ラストの「満月」の優しい収束がまた上手いですね。デビュー作とは驚きです。普段SFはあまり読まないのですがこれは素直に面白かったです。今後の作品も楽しみです。2014/05/16
miroku
26
並行世界・異世界の幻視。ここではないどこかへの憧れ。旅に病み夢は枯野をかけめぐる・・・芭蕉の句を思い出すような作品集。2015/10/06
yumiDON
24
ガチSFというより、抽象的な世界を描いた短編集。ザSF的な近未来世界と現代の間に位置しているように感じる舞台設定です。星新一さんと三崎亜紀さんを足して2で割った感じかな。歴史の改変を肌で感じられる装置を着けた主人公を描いた「オニキス」自分の部屋の状況に応じて、情勢が変化していくミニチュアの世界の動静が面白い「神の創造」何故か自分にだけ見える進化していく猿の幻影。ラストがなんとも不条理で皮肉な「猿が出る」平行世界を旅する「三千世界」はドラえもんの映画を観てワクワクした、子供の頃の気持ちを思い出しました。2015/03/13