出版社内容情報
BSE、薬害エイズなど、様々な分野で科学/技術と社会との接点にある問題の調停が求められている現在、STS(科学技術社会論)の役割は重要である。その具体的事例から方法論・思想までをまとめた、初のテキスト。
内容説明
BSE、薬害エイズ、もんじゅ裁判―科学/技術と社会の狭間にある問題を扱うために必要な技法とは?STSの具体的事例から方法論・思想までを解説した初のテキスト。
目次
1 事例分析(水俣病事例における行政と科学者とメディアの相互作用;イタイイタイ病問題解決にみる専門家と市民の役割;もんじゅ訴訟からみた日本の原子力問題;薬害エイズ問題の科学技術社会論的分析にむけて;BSE/牛海綿状脳症/狂牛病にみる日本の食品問題;遺伝子組換え食品規制のリスクガバナンス;医療廃棄物をめぐる攻防;地球温暖化問題と不確実性;最先端技術と法:Winny事件から)
2 解題:Advanced‐Studiesのために
3 アプローチの流れ
4 用語解説
著者等紹介
藤垣裕子[フジガキユウコ]
1962年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻博士課程修了。学術博士。東京大学大学院総合文化研究科広域システム科学系助教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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なさぎ
1
潜伏期間が長く、検査精度の限界を不可避的に孕むBSEにおいて、全頭検査の問題は「事実」よりも「認識」が重要であるとする(p115より)。コロナ禍のPCR検査も同様の事が言えるのでは。論中では、全頭検査は非科学的であったかもしれないが、政府の市民からの信頼をつなぐため、社会的には意義があった、とする。2005年当時はそれで良かったかもしれない。しかし2020年の現在では、「非科学的」であることそれ自体が信頼を失わせる危険性の方が、得られる信頼よりも大きいと思うのだがどうか。2020/08/03
aoura
0
科学技術社会論の教科書のような書籍。社会と科学技術がどのように折衷していくか、について述べている。具体的な事例分析が主。後半に、事例分析の流れを掲載するとともに、社会構成主義を嚆矢とする現代の科学論の経緯を詳説する。「不確実性下の責任」が重要なポイントになりそうだ。2017/03/06
Kohtaro Watanabe
0
科学技術社会論の教科書的な書籍。社会と科学・技術との間で起こる様々な問題の研究手法について、9つの具体的な事例分析を通じて説いています。一番印象に残ったのは、遺伝子組換え作物の事例で、フレーミング(問題の捉え方)によって、各国の対応が全く異なるという点。やはり科学は不確実なものであり、それゆえ政策決定は非常に難しいと感じました。本書は、巻末の用語集で科学技術社会論特有の概念についても簡潔にまとめてあり、まさに教科書。一応読了しましたが、再読の必要がありそうです。他の関連書籍も含めてまだまだ勉強しないと…研