内容説明
戦後のヨーロッパの「思想の君主」として世界的影響をもったサルトルの晩年は痛切であった。自らの失明、老衰に加え、政治は保守化し、左翼の破局は明らかであった。この状況下でサルトルが〈希望〉を語ったとき、それは彼の生涯のラディカリスムを否定するものなのか、新しい思想的展開なのか、人々は判断に苦しんだ。サルトルに何が起こったのか、未完の大作フローベール論を手がかりに、サルトル最晩年の心境に迫る。
目次
第1章 変貌したサルトル(『いま、希望とは』;〈左翼〉の絶望;〈同伴者〉の希望;〈徹底性〉の否定;暴力、友愛、倫理;歴史とメシア思想)
第2章 フローベールへの執着(毛派とフローベール;フローベールとサルトル;『家の馬鹿息子―ギュスターヴ・フローベール論(1821―1857)』
乗り越えがたい幼少期)
第3章 サルトルと〈知識人〉の問題(〈知識人〉の形象;サルトルの〈知識人〉論;いま、知識人とは)