新潮文庫
私は忘れない (改版)

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  • サイズ 文庫判/ページ数 358p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784101132051
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

内容説明

日本のめざましい経済成長の陰に、電信電話もなく台風の被害も報道されない僻地。海の荒れる時は定期便の船さえ近づけない閉ざされた南の離島、黒島。スターの座を夢みながらチャンスを逃した門万里子は単身黒島へ旅立ち、自然との闘いの中でたくましく運命を切り開く人々の純朴な姿に心を打たれる―。明るい筆致で、厳しい日常生活の中に人間らしさの恢復を試みた問題作。

著者等紹介

有吉佐和子[アリヨシサワコ]
1931‐1984。和歌山生れ。東京女子大短大卒。1956(昭和31)年「地唄」が芥川賞候補となり文壇に登場。代表作に、一外科医のために献身する嫁姑の葛藤を描く『華岡青洲の妻』(女流文学賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

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@nk

53
よく聴くPodcastで本著者が推されていて、たまたま新聞で本書が紹介されていた。そして私は今、1年限りの離島暮らしをしている。これは確実に呼ばれていると感じ、手に取った。この物語はS34(1959)に朝日新聞で連載されていたらしい。つまり今から60年ほど前の黒島の現実が描かれている、ということか(片泊も大里も実在する地名)。どこまでがフィクションかは知らないが、芋焼酎と唄、台風と塩害、島民と学校の関係性、そして男性優位など、まさに今の私の暮らしにも通ずるかのごとく、本書での描写の多くに目を見張はるもの⇒2023/01/10

蛇の婿

32
主人公が黒島に渡ってからが俄然面白いです。ストーリーはわりと王道ですが、逆に王道であるがゆえに素晴らしい。//…はるか昔、離島に単身赴任した人間の苦労話を聞いたことがありますが、離島でいちばん苦労し、かつイヤだと思うことは人間関係なのだそうです。たとえばたいした用事でもないのに夜中にたたき起こされて村長に呼びつけられる、とかの権力の示威行動等ですね。この本ではオブラートをかけて書いてあるようですが、やはりその辺はきちんと、しかしちゃんと作品の邪魔をしない程度に書いてあることにも感心しました。2015/03/10

たぬ

23
☆4 4日に一度の定期船すら来られないことがよくある。医者がいない。薬がない。通信手段がない。近親婚を繰り返して皆同じ顔。反応が鈍く表情のない子供たち。台風が来るたびに家も畑も押し流されて人死にが出る。最終的には笹小屋で余生。60年以上前の話とはいえ同じ日本にこんな場所があるなんて。ここに自発的に住む=緩慢な自殺なんじゃ。東京に戻った万里子がうまいことやってくれるのを祈るのみ。2024/03/08

田園の風

15
本の帯に「有吉佐和子没後30年記念復刊」とある。この本は僕にとって忘れられない一冊だ。生まれて初めて読後に涙したのがこの本だった。高校生の頃だ。ストーリーは粗方記憶していたが、女優の卵が離島の人達や生活に触れ、成長していくものだ。当時の離島と都会のあまりのギャップに、今の人には中々受け入れられないかもしれないが、有吉佐和子も当時は20代、作品の隅々まで若さが溢れている。2014/11/15

tamako

13
伊豆大島に行って本作を思い出して何十年ぶりかの再読。昭和34年に新聞連載として発表された本作。「皇太子殿下も平民の娘と恋愛結婚されたでしょうが」と書かれる、そんな時代の現代物。有吉佐和子にしては素朴な表題だが、本書に取り上げられた「忘れられた島」という実在書籍タイトルへの回答なのだろう。「島の天災や急病には、その場でいくら金があっても、なんの役にも立たないのです」という校長の言葉が重い。2023/01/08

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