講談社現代新書<br> 中世の開幕

講談社現代新書
中世の開幕

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  • サイズ 新書判/ページ数 222p/高さ 18cm
  • 商品コード 9784061158252
  • NDC分類 210.36
  • Cコード C0221

出版社内容情報

【内容紹介】
王党の公卿、受領層、武士団に支えられた院政は、摂関政治のなかから生まれ、中世の幕開けを告げた。本書は、院政から鎌倉幕府滅亡までの300年を公武双方に貫通する二元的構造を軸にあざやかに解剖する。同時に、北条執権下の政争だけでなく、従来等閑視されてきた鎌倉期の京都の動向にも十分目をそそぎながら、次の時代への転換の道筋を明らかにした。戦後歴史学の誇るべき見事な成果がここにある。

今様・先例・道理――変革期の文化の特徴として、「今」という現実を注視することがある。院政期には「平安京」がしだいに「京都」という新しい固有名詞にとってかわられ、治天の君の居所が、平安京の域内にとどまらず、洛東・洛南に移ったことが、その大きな理由である。その変質を示すかのように、洛外に地方の名所が移されて、今熊野・今日吉さては少しおくれて今神明(今伊勢)などの地名があらわれるようになる。後白河院のころのことである。それらは地方の名社大刹を、はるばる参詣する代わりに京都に勧請して、これを分社ではなく今の社として崇敬するのである。都市的集中が人口だけでなく名所にもおよんだといえるだろう。このように今の意識は、今様すなわち現代風を意味して、風俗の上におよんでいた。今様姿とか今様歌などと呼ぶのがそれで、今様歌はたんに今様とも略称されたのである。この現代今様は院とくに後白河院の時代の大流行であった。院も今様を熱愛し、これを収集し編集して『梁塵秘抄』と名づけた。――本書より