講談社現代新書<br> アメリカ人 - その文化と人間形成

講談社現代新書
アメリカ人 - その文化と人間形成

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  • サイズ 新書判/ページ数 188p/高さ 18cm
  • 商品コード 9784061155152
  • NDC分類 361.42
  • Cコード C0239

出版社内容情報

【内容紹介】
アメリカの息子たちは、親を手本にしようとはしない。親の世代を乗りこえることが彼らの目標であり、親たちは、息子に遅れをとらないよう腐心する。これは、「古いもの」は乗りこえられるきであり、「新しさ」にこそ価値があるという、開拓の歴史が生んだアメリカ特有の価値観をよく象徴している。開拓精神とリベラリズムは、アメリカのよき伝統であったが、いま、人種、公害、経済不安、戦争などの問題は、アメリカ社会の伝統的価値観を崩壊させつつある。本書は、混迷するアメリカ人の価値意識と行動原理を、具体的エピソードをまじえて、鋭く分析した。

〈調和のあるアナーキズム〉――ディキシーであれ、モダンであ、ジャズのいちばん重要な点は、指揮者がいない音楽だということである。指揮者だけでなく、楽譜もない。数人のチームがそれぞれ楽器をもちより、他の楽器の音と相互にリズムを推しはかりながら、独自の個性とハーモニイをうみ出してゆく音楽の形式である。ジャズグループの演奏をつらぬくものは、調和のあるアナーキズムの美学である。こういう具合に、雑多な人間が、雑多な個性をもちよって、互いにその個性を最大限に発揮させるような仕方で調和をとるという思想、そして、それが可能だという確信、それは、政府だの指導だのを抜きにして、自由な民衆だけでやってゆくのだ、というアメリカ人思想の結晶だ。――本書より

フロンティアのうえをさまよい、うごきつづけるアメリカ人は、その気分や態度のうえで、きわめて身軽であった。伝統的故郷のある文化――たとえば日本――では、故郷が人間の心をつねに吸い寄せる。「男子志ヲ立テテ郷関ヲ出ヅ」といったような、一種の悲壮感と決断によって人間は故郷と袂別した。しかし、アメリカ人に「故郷」はない。「ホームタウン」ということばは、なにがしかの感傷をもたらすがそれ以上のものではない。――「アメリカ人の行動原理」より