出版社内容情報
異文化との接触・交流が拡大した現在,異文化間の衝突,ステレオタイプの危険,文化の画一化など,課題も多い.混成化する文化状況を見据え,文化人類学者としての体験や知見から,真の相互理解に必要な視点を平易に論じる.
内容説明
IT化、グローバリゼーションが進み、日常的に接触・交流が増大した「異文化」を私たちは理解しているだろうか。異文化間の衝突はなお激しく、ステレオタイプの危険性や文化の画一化がもたらす影響も無視できない。文化人類学者としての体験や知見を平易に展開しながら、混成化する文化を見据え、真の相互理解の手掛かりを探る。
目次
1 異文化へ向かう(文化は重い;異文化を憧れる)
2 異文化を体験する(バンコクの僧修行;境界の時間;儀礼の意味)
3 異文化の警告(異文化に対する偏見と先入観;ステレオタイプの危険性;文化の衝突)
4 異文化との対話(文化の翻訳;「混成文化」とは;文化の境界に生きる;自文化と異文化)
著者等紹介
青木保[アオキタモツ]
1938年、東京に生まれる。東京大学大学院(文化人類学専攻)修了。大阪大学で博士号(人間科学)取得。大阪大学教授、東京大学教授を経て、現在、政策研究大学院大学教授。著書、『儀礼の象徴性』(サントリー学芸賞)、『「日本文化論」の変容』(吉野作造賞)ほか多数
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感想・レビュー
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汐
44
小論文のために。 インターネットなどが発達したことによって異文化に触れることが身近になった現代。その中でも異文化をきちんと理解することは難しいと思いました。日本人は無意識に中国やアジア圏の文化を劣っていると判断しがちだというのは、そういえばと納得。2017/08/21
テツ
25
自分が生まれ育ち馴染みきった文化とは違う文化。そちらで育った相手との相互理解の困難さ(文化が云々前に基本的に他人を理解するなんてことは至難の業なんだろうけれど) 大切なのは他人を評価するときに怠惰にならないこと。十把一からげにラベリングして評価(区別、差別)することは簡単なことだけれど、人間同士はまずタイマンで、お互いの育った文化風習、宗教、価値観などを知った上でその人個人を味わい尽くしてから評価しなければならない。他者の大切にする文化には敬意を払う。文化に上下の差はない。パラダイムが異なるだけだ。2018/10/06
魚京童!
22
異文化って自分の文化が他とぶつかったときにしかでてこないよね。すべてが1つであったのなら。それは異文化ではなくなってしまう。あいつが気に喰わない。異文化だっていっていたら、一人で生きていくしかない。でもそれが可能になって、どうでもよくなった気がする。隣の人が何をやっていても自分には関係ない。そうなったら、理解が進まないけど、ぶつかるから理解がいる。でもぶつかることがなくなったら、どうなるんだろうね。どうしたいんだろうね。その辺が難しくて面白いところだと思うんだ。2020/10/26
ミツ
18
タイトルに偽りなし。やや丁寧過ぎるきらいもあるが、異文化理解、ひいては他者認識という根の深い問題について易しく要点を押さえて論じる。グローバル化による画一化とノスタルジアによるルーツ探し、開放性と閉鎖性、2つが同時に進行し文明が衝突する世界の中にあっての混成としての文化の認識、あるいは翻訳し越境し新しい文化の創造者としてのディアスポラの思想。なんともスケールの大きい話だが、著者自身のタイの僧院での実体験や映画や文学作品の例などをふまえて論じてくれており、飽きることなく読める。良作。2013/08/10
morinokazedayori
16
★★★★著者は文化人類学者。仏教国タイについての理解を深めるために、出家してタイの僧院で修行したエピソードは、目新しくて興味深く読んだ。民族.宗教.地域.言語が異なる異文化への理解を深めることで、自国の文化も深く理解でき、他者との相互理解に基づく深い交流が可能になるという。これからの未来を生きる全ての人にとって、今後の大きな課題の一つだと感じた。2019/10/03