出版社内容情報
法・政治思想史上の大古典として著名なモンテスキュー(一六八九―一七五五)の『法の精神』(一七四八)は,三権分立論で有名だが,近年では,法社会学,比較法学,法学史の先駆的業績として注目を浴び,法と社会の多角的な分析に,さらには異文化間の相互理解に貴重な示唆を与える書として高い評価を得ている.詳細な訳注を付した完訳決定版.
内容説明
法・政治思想史上の大古典として著名なモンテスキュー(1689‐1755)の『法の精神』(1748)は、三権分立論で有名であるが、近年では、法社会学、比較法学、法学史の先駆的業績として注目を沿び、法と社会の多角的な分析にさらには、異文化間の相互理解に貴重な示唆を与える書として高い評価をえている。上巻には第一・二部を収録。(全3冊)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かわうそ
50
三権分立についてはそこまで本書で扱われてはない。というのも三権分立はモンテスキューにとって大きな主題を支える副題の一つでしかないからです。彼が言わんとしたことは自由というものが如何にして担保されるかということなんですね。あくまでも三権分立はその自由という目的を達成するための手段として存在するんです。そして、意外と言えば意外ですが彼は必ずしも民主政のみを良しとしている訳でもない。あくまでも本書では君主政、民主政、専制政治それぞれを動かすバネや原理があるとしそれぞれの原理を解き明かそうとしていきます。2023/05/05
加納恭史
19
さて、ルソーの一般意志と個別意志による多数派の相克は難しいかな。ルソーはこの本の「法の精神」を十分に検討している。著者モンテスキュー(1689~1755)は立法と行政と司法について、歴史的に異文化の相互理解も深い。特にローマの様々な法律体制に検討を加える。ギリシャにもイスラムにもインドにも中国にも幅広く驚く。日本の記述まである。モンテスキューはルソーの三政体よりも更に深いのに驚く。民主政、貴族政、君主政。更に先制政体や制限政体の中での政治的自由を追及する。その歴史的な考察はハンナ・アーレントを越えている。2023/07/28
Hiroshi
7
法律の精神について、或いは法律が政体の構造、習俗、風土、宗教、商業等について対してもつべき関係について書かれた本。全31編からなるが、上巻は13編まで。広義の法律とは事物の本性に由来する必然的な諸関係である。法律には自然法・実定法があり、後者には万民法(国民以外にも適用がある法)、国制の法(憲法のことか?)、公民法(国内法)がある。政体には共和政体(民主政と貴族政)、君主政体、専制政体がある。各政体の原理は、民主政体・貴族政体にあっては徳、君主政体においては名誉だが、専制政体においては恐怖が必要なのだと。2022/09/13
有沢翔治@文芸同人誌配布中
7
モンテスキュー『法の精神(上)』読み終えた ・三権分立を説くために書いたのではなく、古今東西の政治形態を考察するため(だと少なくともモンテスキューは書いている) ・古代ローマは共和制時代、事実上の三権分立がされていた。しかし、ときどきこれが崩れ、その度に自由が制限 ・元老院って何←https://shoji-arisawa.blog.jp/archives/51522360.html2021/12/31
あくび虫
5
知識も意欲もなく読んでいるので、学術的なことはさっぱりなのですが……。まず第一に、本気で賢い人だ! と感じました。そこそこもったいつけた表現をする割に、この爽やかで平易な読み心地は何なのでしょう。ーー中身は、現代にも通ずるというか、現代の話にしか感じないです。その証明や反証として、古代のあれこれを持ち出してくるのが面白い。政体の変化はどれも唐突などではないと理解できるし、そうして編み出されたものが世界中を席巻したのだと思うと、感慨深いものがあります。2017/02/27