出版社内容情報
一九三七年,延安で中国革命の取材をしていた著者(一九〇七― )は,ふとしたことから,キム・サンとなのる朝鮮人革命家を知り,彼の波乱に満ちた人生を熱心に書きとめた.広州コミューン等の革命運動の体験や恋愛・結婚観がよき聞き手を得て率直に語られ,感動的なライフヒストリーとなった.朝鮮を考えるための格好の一冊. (解説 梶村秀樹)
内容説明
1937年、延安で中国革命の取材をしていた著者(1907‐)は、ふとしたことから、キム・サンとなのる朝鮮人革命家に出会い、彼の波瀾に満ちた人生を熱意をこめて記録した。三・一運動、広州コミューン等の革命運動や恋愛・結婚についてじつに率直に語られ、感動的なライフヒストリーとなった。朝鮮を考えるための格好の1冊。
目次
第1章 独立宣言
第2章 伏して待つ者たち
第3章 中国の大革命の戦列にあって
第4章 アリランの丘を登って
第5章 朝鮮民族戦線
終章 「敗北のうちに敗北せざるもののみ…」
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
lily
126
1920年代から30年代の革命家による革命運動史と朝鮮民族解放闘争の精神史の軌跡。その足跡は朝・日・中三国にまたがる。肉体は滅びようとも精神は気高く、鋼の強靭さを持ち、死んでも仲間を裏切らないとする忠誠心があった。朴烈とも重なる。やはり日本人への好感は関東大震災を機に失い6000人の朝鮮人が虐殺された。朝鮮人が語るから向き合える真実が確かにあることを忘れてはならない。どうしても今の時代に生きていたら...と考えてしまう。貧しさのあまりに白飯にありつけないこともなく子供に会えないこともなく短命でもなかった。2020/02/13
松本直哉
25
広州コミューンのことは初めて知った。レーニンの死後、世界革命をあきらめたスターリンが一国社会主義論を立ち上げていた折も折、中国には朝鮮・台湾・ベトナムの革命家が集まって、地主を殺して民衆の共同体を作る動きが最高潮に達していた。その革命で中心的役割を果たした革命家に、アメリカ人女性ジャーナリストがインタビューする本書は、抑圧の植民地朝鮮を脱出して革命運動に身を捧げる一人の若者の知性と夢と挫折をつぶさに描く。革命のためには恋愛を諦めると言いつつ、同志のすてきな女性に不可避的に惹かれてゆく様子がほほえましい2022/11/12
ぼーじょみ
5
朝鮮独立運動や中国共産主義運動に身を投じた朝鮮の革命家、キム・サン。幾度となく敗北や裏切り、拷問を経験し、仲間を殺され、流される血に苦悩し、自身も死の淵に立たされながらも、その度に暗く陰惨な歴史に抗う革命家としての彼のヒューマニティが研ぎ澄まされていく過程に朝鮮の絶望と希望の一抹を象徴的に見出す事が出来たように思う。植民地主義者が己の暴虐を忘却させようと目論もうが、スターリニストがその歴史を簒奪しようが彼をはじめ、何千、何万もの闘士の屍の上に朝鮮の闘いは未完のものとして、依然としてあるのだ。2013/12/01
桜井晴也
3
「『けれど朝鮮の川がふつうの日にはどんなに美しく澄んでいるかお気づきでしたか』この問いは少なからずノスタルジックだった。『中国では澄んだ川や運河を見たことがないのです。私たち朝鮮人は朝鮮の川で自殺するのなら満足だというのですが、中国の川はきたなくて、そんな気になりません』/『あなたがた朝鮮人も、日本人のように自殺が好きなのですか』」2012/06/29
さとまみ読書垢2(小説・その他専用)
2
1930代の朝鮮独立運動を知る必読書。