出版社内容情報
日本人を過労死に追いやっているものは何か.働く人はいい人だという倫理観,組織への帰属意識,仕掛けられた自発性……本来,人間が働くとはどういうことか.労働観の転換を,組合運動の復活をと熱っぽく語り合う.
内容説明
日本人を過労死に追いやっているものは何か。働く人はいい人だという倫理観、組織への帰属意識、仕掛けられた自発性…。本来、人間が働くというのは、自分が人間らしく少しずつ発達していくということではないか。労働観の転換を、組合運動の復活をと熱っぽく語り合う。
目次
なぜ働きすぎるのか
人間が働くということ
労働観の転換を
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
扉のこちら側
62
2016年1114冊め。1991年発行であるが古さを感じさせない。ということは現在においても引き続き議論の余地が嫌というほどあるということである。本文中に出てくる平均収入はこの頃より更に下がり、労働時間は変わらず。仮に収入が増えたとしても、それを時間という余裕に変換できない日本からはまだまだKaroshiはなくならない。2016/12/20
フリスビー
22
日本人は働き者だから、という俗説をまずは完全否定。「過重労働による過労死」という予想を遙かに超えた深く鋭い内容に、薄いブックレットながらもハードカバー並みの密度を感じました。日本の企業社会は「軍隊」であるという所には首肯せさるを得ません。最も抑圧されているが、同時に最も管理されていない主婦と学生に注目していることも興味深い。エリートも、家に帰れば自立不全のマザコンばかり、というのもありがちですね。20年前の対談ですが、今も変わらぬ輝きを放つ本です。2014/06/26
さんぷ
4
1990年頃の対談なのでこのころ危惧していた問題が今は少しずつ改善の方向に向かっているとは感じる。しかし、日本人が休むのが下手で働いていないと何をしていいかわからないというのは自分もそうであるから非常に納得。ただ自分でいやいやではなく、仕事を中心だと選ぶ人生を送るのなら、それはそれでいいのではないかと思う。2015/05/03
TAKAMI
1
豊かになるほど忙しくなるという不思議な状況に対する問いは1991年から存在していたみたいだが、20年経ってどれほど共通認識は変わったのだろう。過労死なんて日本人しかしない(と言われている)から、何か日本特有の思想があるのかと思ったがそうではないような気がした。もちろん日本的思想の影響はあるけれど、決定的要因でないように思った。決定的要因は資本主義的思想だと思った。この辺りをより詳しく突き詰めていきたい。2011/03/19
ゆう
1
1991年。対談形式。本書のはじめに提示される問いは現在も死んでいない。即ち、経済的にゆとりが生ずれば、それをモノにするか余暇にするかという選択も必然的に生ずるはずだが、なぜ豊かさが時間という形にならないのかという疑問である。斎藤氏とラミス氏の二人はこの疑問点に対し、日本人の労働倫理や気質、人材管理、産業構造、歴史など、多方面からの解答を試みるが、そのひとつひとつに非常にスケールの大きい議論が展開されていて面白い。このことは、日本における労働疎外解消の困難さの裏返しになっている。2011/01/29