内容説明
毎年四月と一一月、それぞれ約四〇〇〇人への叙勲が発表され、メディアも大きく報じる。だが、そもそも勲章はいつ、何のために生まれ、どんな変遷をたどってきたのか。人選や等級はどんな基準と手順によるのか。人間の序列化、官尊民卑の助長など、批判はどう展開されてきたか。勲章の製造現場や売買の実情もまじえて、その表と裏を描く。
目次
第1章 勲章誕生―薩摩藩の野心、幕府の焦燥
第2章 整えられる栄典制度―「大日本帝国」の下で
第3章 生存者叙勲の停止と復活―戦後の転機(1)
第4章 相次ぐ批判、そして改革―戦後の転機(2)
第5章 誰に、どの勲章を?―選考の過程
第6章 国家との向き合い方―受勲者・拒否者たち
第7章 売買される勲章―製造の現場と市場
著者等紹介
栗原俊雄[クリハラトシオ]
1967年生まれ。東京都出身。早稲田大学政治経済学部卒。同大学大学院政治学研究科修士課程修了(日本政治史)。1996年、毎日新聞社入社。横浜支局などを経て、東京本社学芸部記者(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
浅香山三郎
21
著者は、近現代の日本の歩みをテーマにし続ける毎日新聞記者で、『戦艦大和』や『シベリア抑留』などの新書で知られる。本書は、勲章のカラクリに迫るもので、本来近代史家がきちんとやらねばならぬ仕事に取り組んでゐる。日本最初の勲章が薩摩藩の作つた「薩摩琉球国勲章」だといふ話や、政治家や官僚に多く民間人に少ない授章の様相、勲章製作の技術継承の問題など、国家と人間の見栄と欲望が蠢く領域をうまく描いてゐる。2020/03/30
梅干を食べながら散歩をするのが好き「寝物語」
11
幕末から明治維新期に日本でも生まれた勲章。そこから今に至る栄典制度の整備の歴史と変遷が語られている。叙勲の打診を辞退した人々のドキュメントは面白かった。最後の章で、古い勲章が結構な高値で売りに出されている事実について触れられている。誰のものか調べることが出来そうなものだが…。受章した本人にとっては嬉しいものだが、遺族にとっては大した価値がない物となるのであろう。驚いた。2020/04/24
CTC
8
『遺骨』の毎日記者栗原俊雄氏による2011年の著作。近代国家日本は国際儀礼上の必要から、また中央集権国家として統治のイチ手段として叙位叙勲=栄典制度を活用した。著者はここに国の本質が見えるのでは、と本書を著したそうだが、例えば昭和初年の天岡某の「売勲汚職」は(大変悪質ですね)、血盟団の井上日召も動機の一つに挙げており、かように見ていくと昭和日本を見る一つの鋭い視座になる。誰が叙勲されたかななど興味もないが、辞退した人、返上した人の顔ぶれや理由はどれも非常に筋張って好感が持てる。しかしルメイの勲一等の酷さ。2015/07/15
Ex libris 毒餃子
7
仕事のため2023/02/25
壱萬弐仟縁
7
1582年、キリシタン大名、大友宗麟と有馬晴信、大村純忠は、ヴァリニャーノの勧めで、ローマ教皇の下に使節派遣(12頁)。褫奪(ちだつ)なんていう漢字は知らないが、勲章を授与された者の地位を失わせること(49頁)。貧しい研究者のために、文化勲章を、というのではないのか、という昭和天皇の疑問(54頁)。本来は、ハイソな人により箔がつくのでは、当たり前に当たり前と言っているもので意味はないな。さっき読んだ森先生の本からすれば、ばかばかしい勲章ってことになりはしないか。官高民低(98頁)は、官尊民卑と同じだな。2013/08/08