内容説明
パンダはなぜ手に6本の指を持っているのか、ある種のダニの雄はどうして生まれる前に死んでしまうのか、ミッキーマウスが可愛くて悪役のモーティマーが憎たらしいのはなぜか、ピルトダウン事件の真相は?―このような謎の解明に、現代進化生物学の旗手グールドは挑戦する。才気溢れる着想と楽しい話題、ときには辛辣だがユーモアに富んだ語り口で、科学と人間の関係をじっくり考えさせてくれるエッセイシリーズ第2作。
目次
第1部 完全と不完全―パンダの親指をめぐる三部作
第2部 ダーウィン的世界
第3部 人類の進化
第4部 人間の違いの科学と政治
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
糸くず
3
本格的科学エッセイに初挑戦。案の定こちらの知識が乏しく、ついていけないとこもあったが、正に「筋金入り」というべきダーウィン主義者であるグールドの探求心と知性に感服。一人の人物の思想をここまで徹底的に読み込み、体の内に取り入れた人は滅多にいないと思う。グールドにとってダーウィンの思想は自らの血と肉なのだろう。レイシズムに加担してきた「科学」への静かな怒りをつづった第4部が特に印象的。2014/03/19
お肉太郎
3
グールド先生は偉大な知性をお持ちである。大好き。2013/09/11
Kazuhisa Hirao
2
もう少し堅い本歌と思っていたらエッセイ集だった(^^ゞ 表題のパンダの親指が面白かった。パンダの親指は人間みたいに他の4本の指と相対して動くのでなく、他の熊類同様に他の4本の指と同じ方向にしか曲がらないのだそうである。では、あの笹をつかんでいる時に使っている親指みたいなのは何?あれは橈(撓にあらず)側種子骨というらしい。指では無いのである。
takao
1
ふむ2020/11/19
bittersweet symphony
1
断絶平衡進化説を唱える古生物進化論学者である著者による、1970年代にアメリカ自然史博物館の広報誌に連載されていたエッセイを、テーマに添った形に再編集したもの。内容は多岐に渡っていて全体をまとめるのはとても無理です。著者はバージェス頁岩の紹介によって一躍有名になりました。他の指と対向しているパンダの親指状のは実は手首の骨の一部が進化したものだとか、名高いピルトダウン人頭骨の捏造事件の真相を推理したり、本川達雄氏の著作で有名になった動物のスケールによる時間感覚の違いなどもこの時期にすでに言及されています。2005/08/08