出版社内容情報
源河 亨[ゲンカトオル]
著・文・その他
内容説明
あるものを「美しい」「醜い」など評価するとき、私たちは何を考えているのか。評価を下す基準となる「センス」とは。こうしたことを考える学問が美学だ。本書は絵画や音楽ではなく、身近な食事からその扉を開く。「美味しい」「まずい」という評価は人それぞれ?レビューサイトの情報があると、純粋に食事を楽しめない?美食の感動は言葉にすべきじゃない?インスタントラーメンは芸術か?やさしくも奥深い美学入門。
目次
第1章 五感で味わう
第2章 食の評価と主観性
第3章 相対的な客観性
第4章 知識と楽しみ
第5章 おいしさの言語化
第6章 芸術としての料理
著者等紹介
源河亨[ゲンカトオル]
1985年、沖縄県生まれ。2016年に慶應義塾大学にて博士(哲学)を取得、日本学術振興会特別研究員PD(東京大学)、日本大学芸術学部非常勤講師などを経て、2021年より九州大学大学院比較社会文化研究院講師。専門は、心の哲学、美学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はっせー
80
食べることが好きな人や考えることが好きな人におすすめの本になっている!読んだ感覚としては伊藤亜紗さんが好きな人はこの本も好きだと思う。美味しい。味覚や嗅覚から判断されるこの美味しい。美味しいと感じる基準や評価などのセンスについて考察されている。そもそも先行研究が少ない分野になっている。従来では視覚や聴覚が知的な感覚。嗅覚・味覚・触覚が動物的な感覚として分類されてしまっていた。だが研究が進み新しく研究対象として評価されてきている。私は食べることが好きで考えることも同じくらい好き!そう心で叫びたくなる本!2023/07/03
ジョンノレン
48
どちらかと言えば敷居の高い視覚に基づく美術や聴覚ベースの音楽に加え、食を美学に加えることで、より多くの人に美学的哲学的アプローチの方法を伝えることを目的とした労作。とはいえ終盤芸術性の検討は不発気味。食事の味わいもまた視覚や聴覚も含めた多感覚知覚統合の結果であり、純粋な味覚は存在しない(ポテチ咀嚼音の強弱や白ワインに赤色素を混ぜたテイスティング実験)。「蓼食う虫も好き好き」に代表される主観主義が有力になりがちだが、店の口コミ等でより客観的なコメントを探す客観主義的側面も。徹頭徹尾の論理性で食に食らいつく。2024/03/14
みこ
24
もっと人間の欲望の根本に訴えかけるような庶民的な内容かと思いきやかなり哲学的な内容。数値などで表されるでもなく、更に言えばその尺度でさえ人それぞれな味覚というものを多角的に解説。とは言え一つの話題の説明を繰り返している部分もあり、流石に一冊の本にするには内容が薄かったかも。美味しいものを食べるときはあまり難しいことを考えずに素直に楽しみたいな。2022/10/16
koke
13
『おいしいごはんが食べられますように』には、毎夜カップラーメンを食べて「丁寧な暮らし」に反抗する男が出てくる。言わば逆ハンガーストライキ。ところで、源河によると「料理は芸術である」、カップラーメンすら芸術でありうるという。源河は「料理は芸術ではない」という主張に手際よく反論し、料理と芸術が現に持っている多くの共通点を指摘している。食べることは芸術体験である。『続・おいしいごはんが食べられますように』は脱サラしてカップラーメン・ソムリエになった男の話がいい。2022/12/06
owlsoul
11
「美味しい」という感覚は個人の主観であり、他人から指図される筋合いはない。しかし、私たちは飲食店を選ぶ際、グルメサイトで他人の評価を参考にしたりもする。食の評価は、主観主義と客観主義が複雑に入り組んでいるのだ。また、私たちの味覚は料理に対する付属情報によって(その情報の真偽に関係なく)変化してしまう。では、何一つ情報を持たずに食することで真の味覚にたどり着けるのかというと、そうでもない。何の情報もなければ、それが安全な食べ物かどうかも分からない。もはや「美味しい」以前の問題である。食の楽しみは複雑で奥深い2023/08/13