内容説明
日本の移植医療は、脳死論議ばかりが注目される一方で、本来あるべき包括的法整備がなされず、当事者の保護が行き届かない面があった。現実にどんな問題が起こったか、海外ではどうか、多くの人がより少ない負担で医療を受けられるために考えるべきことは何か。再生医療の展望にもふれた、研究者とジャーナリストがタッグを組んだ一冊。
目次
序章 臓器移植の限界―脳死論議の陰に隠された問題を追う
第1章 臓器提供者はどうして脳死になったか―死因究明と情報公開
第2章 安楽死ドナーは受け入れられるか―心停止後臓器提供の新展開
第3章 生体移植への依存―日本の臓器移植の最大の歪み
第4章 人体組織の移植―知られざる実態と課題
第5章 実験か医療か―病気腎移植にみる先端医療管理の問題点
終章 限界をどう超えるか―再生医療の現状と課題
著者等紹介
〓島次郎[ヌデシマジロウ]
1960年生まれ。三菱化学生命科学研究所室長などを経て、現在は東京財団研究会(非常勤)。専門は生命科学・医学を中心にした科学政策論
出河雅彦[イデガワマサヒコ]
1960年生まれ。92年朝日新聞社入社。2002年から編集委員、13年より青森総局長。医療・介護制度、医療事故、薬害エイズ事件、臨床試験などを取材。著書に『ルポ医療事故』(朝日新書、「科学ジャーナリスト賞2009」受賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
テツ
23
死んだ後の自分の身体になんてこれっぽっちも興味がないので使える部分は使って貰って構わないし免許証にも移植オッケーで記入しているけれど、日本って実はその辺りに関する法整備が適当で未だきちんと機能していないとこの本で知りビビる。道徳的なこと。生と死の意味。死の判定。そしてそれを踏まえた上での法律。賛成でも反対でもきちんと全てを学ぼうとした上で自分で考えて答えを出すべき問題だよな。2018/05/23
とうゆ
11
臓器移植医療について最新のトピックスがわかりやすく解説されている。2016/01/19
Francis
8
日本の臓器移植についての本。日本では脳死の論議は盛んに行われたものの、その他の臓器移植に関する問題点についてはあまり議論されなかったために起こった様々な問題について書いている。脳死からの移植の場合、死因が後から検証できる体制が整えられていないことや生体移植や組織移植を規制する法律がないために野放しになっている現状、臨床研究やiPS細胞を用いた再生医療について記述。事実に即して分かりやすく書いている。臓器移植に賛成の人も反対の人もまずこの本をきちんと読んでから議論をして欲しいと強く思った。2014/12/08
てくてく
4
脳死体からの移植に関する問題(脳死の死因が明らかにされないため、犯罪などが隠されてしまうかもしれない点)、臓器移植と脳死に関する法律は出来ているものの、生体間移植や臓器として見なされていない臓器の移植については無法地帯(特に膵臓と膵島の移植の差)であることなど、移植に関する諸問題を取り扱っており、勉強になった。<おすすめ>2014/09/06
めん
3
社会学者の橳島さんの話をラジオで聴き(テーマは出生前診断)、本書を手にした。共著の出河さんは朝日新聞編集委員/「本書が生まれるきっかけは09年の臓器移植法改正」と。5年前の本だが、古さを感じなかったのは、前記以降の法改正がないためか。日本移植学会倫理指針は15年改定があるが。/メモ•死因はドナー情報のなかで、最も重要なもの→問題は、正確な死因を究明する体制が日本では不備であること•2013年生体腎提供者が術後・術中に死亡→臓器移植法を再改正し生体移植に関する条文を設け、公的なチェックをかける体制が必要。図2019/07/31