内容説明
烏合の衆はいかにして、歴史を動かす群衆に変貌するのか?革命を起こす心性はいかに作られるのか?歴史学が初めて正面から「群衆」に向き合い、「心性の歴史」を開拓した古典的著作。個と集合の相互作用を通じて日常の場で形成される「集合心性」に着目し、危機に面してのその変容・伝播を説き明かす議論は、ダイナミックで今なお新鮮な響きを持つ。
目次
序論
1 純粋状態の群衆、または「集合体」/「半意識的集合体」/「結集体」への突然の変容(単なる「集合体」;「半意識的集合体」;「結集体」への変容)
2 革命的集合心性(「心的相互作用」;集合心性の形成;革命的集合心性の特質;革命的心性の機能)
3 「集合体」ならびに「結集体」の固有の作用(「集合体」の作用;「集合体」と「結集体」の類似性)
結語―カギとしての「集合心性」
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
77
社会を変革するに至るまでの群衆の心理について考察した、今、読んでも画期的な本である。革命に至る群衆とは、その思想が動物的に感染した者ではないし、全員が能動的に参加している訳でもない。扇動者がいてこそ、民衆は無計画に革命へと参加できるのだ。そして革命が支配者やそれに位置する階級が暴力的か否かの事実を問わずに復讐という形で暴力性を帯びてしまうのは、「自分がその立場なら独り占めする」などの自分のみに通じる思考があるからだという指摘にドキリ。また、日常的な語らいの重要性はアラブの春やウォール街占拠などを思い出す。2019/01/10
cockroach's garten
24
社会心理学、ならびに集団心理学を学ぶには本書の通読が必須であると感じた。17世紀の初めて市民が王政を倒したフランス革命を主として、民衆あるいは大衆がいかにして暴力の狂乱へ発達するかが書かれた小論文となっている。僅か65ページにも関わらずきめ細かい分析によって濃い内容で纏められているため、難解だ。だが現代の集団心理にもすっぽり当てはまってしまう彼の理論はおぞましく、人間潜在意識は時代や人種の障壁を無関係に飛び越えて今に共通すると思えたことは興味深く、感慨深い。面白い本だった。2017/09/15
ラウリスタ~
9
短すぎるし、本じゃなくてそもそも論文だしと、突っ込みどころは多いのですが、それを補ってあまりある面白さ。人が群集に紛れ込むことでアイデンティティーは喪失するとともに獲得し、個人としての利益とは別に群集としての思想を持つようになる。不作期のパン屋に並ぶ群衆であったり、通達を広場で知らされる民衆であったりと、自然発生的に生じる群集がいかに群集として「組織?」されるのかとか。フランス革命を語る上で必読の書ではないかとも思う。なんか題名がやけに赤いのは気のせいであって、ロシア革命以前の文脈で読むべきなのか?2012/05/15
humi
4
著者は革命的群集について、人間の群と動物のそれを同一視するルボンと、個人の自覚的な集合と捉える旧来の革命史家との、両方の見解を否定する中立的な立場を示し、歴史における心性の役割を強調している。興味深かったのは、「人々の日常の語らいに心的相互作用が生じており、無意識にも考え・感じ方を共有してそれら集合的記憶などが伝承されることで、予め集合心性は内在化している」といった旨の見解。指導者(ムヌール)の形成、革命的心性を構成する「不安」と「希望」の議論も興味を惹いた。惜しむらくは私自身が世界史について浅学なこと。2015/02/01
がっち
4
集団心理における行動理論。集合心性が、人々を結集させ、革命におこす。歴史的対局はいつも人で動かされる。その集団を分析した良書であるといってよい。また個人じゃ革命は起こせないということも悟れた。人は一人じゃだめなんだよね。2013/06/12