出版社内容情報
小説『アドルフ』の著者として知られるフランス自由主義の思想家バンジャマン・コンスタン(一七六七-一八三〇)の政治論集。古代と近代の自由の違いを明確にした有名な講演、強権的支配を批判してナポレオン後のリベラルな政治体制の確立を訴えた著作とともに、両著を支える重要な小論「人類の改善可能性について」を収録する。
内容説明
小説『アドルフ』の著者として知られるフランス自由主義の思想家バンジャマン・コンスタン(一七六七‐一八三〇)の政治論集。古代と近代の自由の違いを明確にした不朽の講演、強権的支配を批判してナポレオン後のリベラルな政治体制の確立を訴えた著作などを収録する。
目次
近代人の自由と古代人の自由
征服の精神と簒奪(征服の精神について;簒奪について)
人類の改善可能性について
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ラウリスタ~
11
古代ギリシャでは、国家の政治に参加することが自由。一方で、国が大きくなった現代では、一人の政治的役割が小さくなり、個人の自立を犠牲にしてまで国家運営に参加するメリットがない。政治的権力の行使のために私的な快楽を犠牲にすることを強いるのはアナクロニズム。だからこそ代表制が必要。戦争と商業とは同じ目的を目指したもので、商業が発達した現代において国民を非合理な戦争へと駆り立てることは時代錯誤。時代ごとの価値観の変遷を相対主義的に見るのではなく、人類の改善の一直線的運動として(戻る必要はない)考える。2020/06/20
フクロウ
0
1819年の時代制約を踏まえればやむを得ないといえるが、2020年現在では歴史学的に見て支持できない古代人についての理解叙述が多い。まぁそれは置いておいて、古代人の自由=政治的自由/近代人の自由=個人的自由。現在の憲法学の図式でぶった切れば参政権/自由権。政治権力への対抗システムで「商業」が出てき、しかも所有権、用益権なら押さえられるが「流通」しているが故に権力は押さえられない、という話まで突き詰めたのだから、代表制のところで出てくる「委任」に絡めた考察が欲しかったところである。2020/10/19
Lieu
0
小説『アドルフ』の作家の書いた自由論。作家ということだけあってレトリックが豊かで読み応えがある。これほど理路整然と英雄ナポレオンを批判した人は少数派なのではないか。通商が発達すると戦争の有用性がなくなるという考えは、もっともだが、その後の世界史を知っている身からすると、そのロジック通りに進まなかった面が大きい気がする。しかし戦争をする意味がないという考えは普遍的に通用するし、この時代にその考えをこれほど滔々と表明したことはやはりすごいと思う。2020/07/10
葛
0
バンジャマン・コンスタン・ド・ルベック著 2020年5月15日第1刷発行 訳者:堤林剣、堤林恵 発行者:岡本厚 発行所:株式会社岩波書店 印刷・製本:法令印刷 カバー:精興社 企画編集:小田野耕明2020/05/18