内容説明
災害やテロ対策を理由に、憲法を改正して国家緊急権に関する規定、緊急事態条項を入れようという動きがある。そもそも、国家緊急権とは何か。沿革は?他国の憲法はどうなっているか?憲法に入れれば本当に国民の生命、財産が守られるのか?緊急事態条項に関する最良の入門書。
目次
1 緊急事態条項(国家緊急権)とは何か
2 国家緊急権の歴史―どうして生まれたか
3 日本国憲法はどう考えているのか
4 国家緊急権がないと災害やテロに対応できないか
5 外国の国家緊急権
6 自民党の緊急事態条項案(国家緊急権案)
著者等紹介
永井幸寿[ナガイコウジュ]
1955年生まれ。弁護士。日本弁護士連合会災害復興支援委員会前委員長。関西学院大学災害復興制度研究所客員研究員。NPO法人災害監護支援機構監事(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Qちゃん
18
人権を守るためではなく、国家を守るためである国家緊急権。そして、災害対策には役に立たず、障害となること。分かりやすく説明しています。読み終えた時、とても考えさせられます。2016/07/15
makio37
8
災害対策基本法や国民保護法・事態対処法などにより、独仏英米と比べても、すでに現行の日本の法制度の方が権力集中や人権制約が多くなされていると知った。「「人権を守るため」の制度ではなく、「国家を守るため」に人権を制限する」制度である国家緊急権を、日本の憲法に加える必要はないのだ。また、自民党案の酷さも知った。法律により適用範囲を容易に拡大でき、措置の期間に制限もなく、政府が国会を無視して全ての人権を制限し全ての事項について政令が制定できる独裁条項。戒厳令の制定で司法権も取得できるとは恐ろしい。2018/02/18
人間
7
国家緊急権は憲法に必要ない。自民党案は《①目的の不当性、②措置の期限の規定がない、延長基準が100日を超える場合と長すぎる!③権力集中と人権制限が強すぎる、④戒厳令が可能になり、司法権も内閣に移る》とナチスのように独裁色が大変強く、危険である。法の効力の関係性は憲法>法律>命令>行政行為であるが、閣議決定は行政行為であるのにもかかわらず憲法を変える解釈をしたという、憲法を軽視する内閣である。この状態で国家緊急権を憲法に盛り込んだらどうなるか?自明の理だ。自浄システムも同時に作用させなければ独裁国家になる。2019/10/23
Takao
7
2016年3月4日発行。著者は阪神・淡路大震災で事務所が全壊した経験を持つ弁護士。以来、災害関連法制に関わってきたという。緊急事態条項を考えるために必読の良書。ワイマール憲法下でナチスが独裁体制をつくりあげた歴史、明治憲法下での国家緊急権など、緊急事態条項の歴史や諸外国の実際を知ることができた。最も印象に残ったのは、日本国憲法制定当時の金森徳次郎国務大臣の答弁。民主政治を徹底させ国民の権利を保障するには、「非常時」に名を借りて行政権に自由判断の余地を与えることを極力避けた、と明確に述べている。2016/04/26
YOSHI-CO
5
自民党の改憲案に含まれる「国家緊急権」というのがそもそもよくわからなかったので、本書を読んでみた。各国の国家緊急権についても比較として出されていて、初心者によくわかる内容だった。 政府に(ごく少人数の人々に)、改憲案にあるような権力を集中させるのは怖いなという印象。その効力の期限も設定されていないようだ。復古憲法、権利の制限...このところ読んだ本から、どうもよからぬ想像をしてしまう。シビアに三権が分立できているならまだよいのだが...。2016/05/25
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