感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
roughfractus02
4
機能を注視するフォルマリズムにとって、起源とは歴史時間のある時点を指すことではない。『昔話の形態学』で100の口承文芸から31の機能を抽出した著者は、これら機能を十分に作動可能なプロトタイプに注目する。それは加入礼と呼ばれ、外部の者が共同体内に加入する際に行う通過儀礼である。時に痛みと苦しみを伴うこの洗礼儀式は、階級分化以前の社会での内外の分化を表すと同時に、階級分化した現代社会にもこの儀礼の混入を見る。旧ソ連の官僚主義が強化される時代に、本書は内部に潜む外部としての異教的習慣を強調する。神は残酷なのだ。2020/04/28
kogoty
4
ありがたいことに貸し出し期限の延長が認められたので読了することができました。世界各国の昔話に奇妙に類似が見られるのは何故か、という疑問はボンヤリとではあるけれどもずっと気にかかっていた。この本は「魔法昔話」というジャンルに絞って、その共通点からその謎に迫っていく。記憶、心（読了できなかったが）、とその起源を見つめる本を読んできて、この本にたどり着けたのは幸せだったと思う。昔話のモチーフの解釈は、ともすればこれは牽強付会だろうという印象を持つけれど、ここに述べられている読み取り方からはその匂いを感じなかった2016/02/14
