内容説明
1929年から1982年まで53年間、精神分析の創始者ジークムントと娘アンナの二代にわたりフロイト家につかえた家政婦―パウラ・フィヒトル。本書は、一ジャーナリストが家政婦パウラに長時間インタヴューをおこない、加えて、一家と親交のあった人々の証言や膨大な数の書簡をもとにまとめあげた「回想」である。ここからは、従来の伝記に欠落していた父娘の素顔、フロイト家の「内幕」にとどまらず、一家と苦難をともにした家政婦が経験した〈20世紀〉が浮かび上がってくる。
目次
第1章 グニグル村―少女時代
第2章 ヌスドルフ、ザルツブルク、ウィーン―奉公に出る
第3章 ベルク小路十九番地―旦那さま御一家
第4章 ロンドン亡命―「パウラ、そのかたたちをお通ししなさい」
第5章 フロイト家を離れて―「忠誠度に難あり」
第6章 手の届かない「お嬢さま先生」―「パウラさまあて」
第7章 老人用パンションにて―「かくて世界の歴史に残る人物となりき」
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
野鹿
1
伝記物は大抵、美化され、理想化されるし、この本もそういうところはあるけど、イチ召使いの目線から描かれた偉人の生活のは矛盾と哀しさが感じられました。2015/03/05
もふもふ
0
フロイト家に長年仕えた家政婦さんへのインタビューで書かれた記録。まさに実録版、「家政婦は見た」で、たいへん面白かった。2016/07/16
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0
フロイト家に2代にわたり53年間(1929-82)仕えた家政婦パウラの回想録に基づく一冊。精神分析的近親相姦の関係にて原父ジクムントと結婚した「正統後継者アンナ」と、部外者ながら労働強迫神経症的な献身により老衰期ジの信頼を得た「わたしのパウラ」との、微妙な暗闘が描写されてて有難い(特にジ死後のロンドン編)。公表条件がアンナの死後というのも納得。 両者とも女性性を放棄した者同士というのも興。--ジクムントは、この子(アンナ)に「おちんちんがない」のに失望し、自分が一番嫌いだった妹の名前を付けた。