内容説明
栄枯盛衰、巻き返し繰り返しして、蘚むした古きものの気が、この都を歩いていると、地霊のように足裏にしのびよってくるのを感じる折がある。目には見えないが、歳月の中を渡ってきた生きているものの気配である。…京の闇夜を酔歩する男が踏み入った、怪異を描く表題作ほか、究美の11篇。
著者等紹介
赤江瀑[アカエバク]
1933年下関生まれ。日本大学演劇科出。1970年「ニジンスキーの手」で小説現代新人賞を受賞。74年「オイディプスの刃」で第1回角川小説賞を受賞。84年「海峡」「八雲が殺した」で第12回泉鏡花賞を受賞
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感想・レビュー
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藤月はな(灯れ松明の火)
21
舞台の魔などに囚われた人が狂うことで真の自由を得られた「巨象のごとく」の衝撃よ。「捨小舟」での些細なことから心が離れた妻を殺したことを自白する何もかも失くした男とその男を精神科医に渡さなくてよかったと安堵する男の対比も鮮やか。「射干玉の」の薬師如来と一人の男の秘め事も官能的。「飛鳴」はありえたかもしれない道行を回顧する、まるで呪いのような話だと感じました。表題作の京にふと幽玄の世界が紛れ込む隠れ里のような雰囲気や「雀色どきの蛇」で言及された小春日和での椿が好きと言う赤江瀑氏の感性が好きです。2013/02/15
八子@ちょっと復活
11
「奏でる瑠璃」が好き。魔性の女という特性と赤江さんの文章が相まって、本当に美しい雰囲気になっている。素敵な瑠璃色が、目に浮かぶようだった。あと「儚儚セレナーデ」も良い。前半の暖かい空気が、新聞記事によって一転するところは息苦しくなった。ありがちな話といえばそうなんだけど、ただのよくある話にはならないところが凄いな。2013/01/31
blue_elephant
6
初めて読む赤江瀑氏の短編集。中井英夫氏が辿っていた道筋に佇む作家ではないかなと。静かな狂気と秘めたる熱情が忍び寄る。エロティシズムに溢れているが、厭らしさは微塵もなく、美しい言葉で綴られる。知らず知らずに赤江瀑氏の世界に絡め取られる。文体の様式美が素晴らしい。しかし申し訳ないが、この装幀はどうかと思う。2019/05/06
静間
5
「幽玄」という漢字が浮かんでくる本。個人的な好みから言うとこの本は耽美・美文すぎるように思うけど、計り知れない奥行きを感じさせる本。唯一、「奏でる瑠璃」だけは既読だった。多分現代文の試験。いつ読んだか明確なところは解らないけど、10年以上前。その間ずっと頭の中に残っていたという事は、その時の私にとっても衝撃的だったのだと思う。この本の中で一番好きなお話。全て短いお話だけど、言葉を時間を掛けて咀嚼して読まなければならないので、4日ぐらいかかった。決してするする読める本ではないけど興味深い本。2012/06/26
mariemaruru2
1
京都弁を堪能しました。2011/10/09