出版社内容情報
笑いながら読んでいるうちに,思わぬところで考えさせられしんみりさせられる不思議な文章の力.漱石文学の原点といわれる『猫』は,漱石が生涯をかけて考えつづけたことをさまざまな形で覗かせてくれる万華鏡ともいえるでしょう.
内容説明
笑いながら読んでいるうちに、思わぬところで考えさせられ、しんみりさせられる不思議な文章の力。漱石文学の原点といわれる『猫』を、原稿ならびに雑誌『ホトトギス』の本文に基づいて翻刻。今回の第2次刊行では新知見により注解を増補した。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
105
漱石全集の1冊目です。小学生のころから読んでいるのですが、もう何度目でしょうか?日本の小説の中では私の中ではいつもトップクラスだと感じています。当時の状況でこのようなユーモア小説(あるいは教養小説)というのはほとんどなかったと思います。全集でもこの最新版よりも大きな菊版で読んでいたのを思い出しました。やはり文庫で読むよりも、文字が大きく読みやすさがあります。2023/10/31
風に吹かれて
21
「薄暗いじめじめした所」で生まれたらしい「吾輩」。兎に角明るくて暖かそうな方へとあるいて行く」と、そこは珍野苦沙弥家であった。「吾輩」は「読心術を心得て居る」。だから苦沙弥家での談話・出来事が手に取るように伝わってくる。三毛子がなくなってから心なしか元気がなくなったようで、それ以後は苦沙弥先生を取り巻く人々の談話・落語に耳を傾けることにご熱心な様子。「じめじめした所」から、本巻では水がたまった「甕」の中へ。蓮實重彦曰く漱石的説話機能のひとつ「水」がここにも!➡2021/03/04
はな
14
再読。今では珍しくもない設定でも、当時は猫目線からの人間観察小説なんて衝撃だろう。内容は主に猫による人間観察だが、猫あるある的なエピソードが沢山あって微笑ましい。漱石が猫の行動をよく観察していたことが伺われる。哲学的で難しい部分もあるが、文学特有の堅苦しさを感じさせずとても読みやすかった。漱石作品は苦手だったが、この作品のユーモアに触れて意識が変わった。2015/05/24
algae
3
小学校以来の再読。以前読んだにもかかわらず、数個のエピソードを除いて内容をほとんど忘れてしまっていた。我輩何のために本を読むのかというアイデンティティの危機である。解説を読むと世の中には我輩は猫であるのパロディ本が大量に存在しているらしい。我輩は淋菌であるとか、破壊力が強すぎて正直ドン引きですわ。2016/12/25
猫丸
2
今まで20回以上読んだはず。苦沙味が行徳の俎問題を躱す際の微妙な間や、まだヴァイオリンは買わんかね、君ありゃあ雨漏りかい、など、やはり漱石は滑稽の名手と思う。