内容説明
〈死〉をタブーの世界の中に閉じこめておくべきではない。〈死〉を見つめることによって、より深い〈生〉の充足を得ることができるのである。―2年7カ月にわたるガンとの闘いの中で、自ら「死の医学」を実践して逝った精神科医・西川喜作。その雄々しくも苛烈な生の軌跡をたどりながら、末期患者に対する医療のあり方を考える。高齢化社会における医療文化への示唆に満ちた提言。
目次
それでもリンゴの樹を植える
眼差しは昇る太陽よりも照らして
苦悩する病者の声を聞く心
二年をこゆる生をつなぎて
菩提樹の一葉に命をみつめて
成熟の最後のステージ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
hatayan
45
1990年刊。ガンを告知され残された時間を生ききった精神科医の闘病録。氏は若い頃に読んだ『夜と霧』を再読して、精神の内面を維持できれば死の恐怖に耐え最後を全うできると気づき、患者として感じたことを遺すために抗がん剤の治療を中止して延命ではなく密度ある生を選択。ガンの転移後も「痛みの苦しさは限りある命を意識させてくれる」と、病気による苦痛をバネに高い感受性を保ち続けます。当時はガンの告知が受け容れられ始めた時代。「死」という言葉をあえて書名に付して、よりよく生きることを繰り返し問いかける意欲的な一冊です。2020/03/15
ちゃんみー
40
長いこと積読であった本であるが、人生も折り返しも過ぎた50歳を目前にして、これは"今"読んでおかなくてはいけないのではないかと年始にあたり読んでみたのである。刊行されて既に30年経ている本である。だから今では当たり前となっていることも多々あるだろう。しかし『生と死』を考えるという普遍の事柄については現在であっても変わるものではないだろう。『輝け我が命の日々よ』を上梓された西川喜作医師が、自らの癌闘病の日々と主に終末期医療の在り方を綴ったものを、著者がその意思を継いで書かれたものであった。(続く)2014/01/13
James Hayashi
24
進行する癌と闘う精神科医西川医師をクローズアップし、仕事、人生、死と言うものを見つめる。病気とは”病は気から”というように気を病むと書く。医師として患者の側に初めてたった医師の心情、コミュニケーションの大切さはもちろん、コンサルティングが医師と患者の間に成り立たなくてはいけない。ターミナルイルに陥りながら、意味のある人生を感じさせた西川医師に感じた。2020/11/09
みっし
7
じっくり、じっくり読んだ一冊。約30年前に書かれた本のため、今と医療が変わっていることも多いが、いい意味でも、わるい意味でも変わっていないところが多々ある。中でも、V.E.フランクルの『夜と霧』の言葉が何度も引用されており、改めて彼の言葉が与える影響は大きく、人間の本質に触れる大切なものだと思った。この数カ月、いくつかの死と向き合ってきた。「死とは?生とは?」、何度も考え、悩み、パンクした。だけど、きっとこの時間は、僕の人生でかけがえのない時間になると思う。2015/09/12
オランジーナ@
4
ある医師の闘病記。ちょっと内容的に古いようにも思うが、名著。死を間近に控えた患者は全てのものがまぶしく感じる。というのは家族とかも同じだと思う。2016/10/02