内容説明
学問の神「天神様」に対する信仰は、伊勢や八幡信仰などとともに脈々と日本人の心に波打っている。しかしながら、天神様が菅原道真であることや、道真その人については、どれだけ知られているであろうか。本書は、のちのいわゆる天神伝説を取除き、真実の道真像を丹念に叙述した史学界の碩学による道真伝の定本をなす名著である。
目次
1 代々の学者の家
2 充実した若い日の生活
3 少壮の官吏として
4 讃岐守の4年間
5 顕栄の座へ
6 破局と終焉
7 道真の家族・子孫・邸宅
8 道真の学問
9 死後の道真
略系図
略年譜
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
だまし売りNo
40
藤原佐世(ふじわらのすけよ)が阿衡は名誉職で実権がないと指摘した。基経は怒って政務をボイコットし、広相の懲罰を要求した。道真は基経に意見書を出した。そこには表現の自由の立場からの主張もあった。 「阿衡の紛議で対立を続けることは文人にとって悲劇です。文人の表現には様々な要素があります。広相は阿衡に職がないから阿衡という表現にしたものではありません。これで広相を罰したならば文章を作るものは全て罪科を免れなくなります。文章は荒廃してしまうでしょう」2023/12/09
Tom
4
初版1962年。文楽『菅原伝授手習鏡』を観てからなんとなく気になりだしていた。文楽のように悪い藤原時平が陥れた、という単純な話ではないが、どうも宇多上皇の寵愛が過ぎるのが周囲から嫉妬や政争の競争相手として邪魔と捉えられ引きずり降ろされた感がある。また道真本人も政局的なものには疎かった。『三代実録』は道真の左遷前に完成していたが手柄を立てさせないために時平、大蔵善行らが奏上を遅らせたのでは、という著者の推理がおもしろい。また和歌でも後世の作者が道真を騙ったものがあることを指摘しているが、正直わからん。2023/08/05
双海(ふたみ)
1
中学生の時に買った本です。なにがきっかけで読みたくなったのか忘れてしまいましたが。
家本明佳
1
菅原道真の生涯について書かれた本。道真というとすぐ「怨霊」という部分が注目されがちだが、そういうオカルトチックな記述はほとんど出てこない。この人は能書家で、詩も和歌もたくさん残っているので、生前の人となりがかなり生々しくうかがい知れる印象。
おうまさん
1
レポートで道真を扱うので。学者でありながら希代の出世を遂げそれゆえに左遷、無念の死を迎えた道真の一生を著述した本。菅原清公、是善と学者の家系に生まれ、学者、為政者として活躍した道真の一生に憧れる。インプットだけでなくアウトプット、つまり文章もとても上手であり他人の公の書類も多く手がけていたということや、文章博士を辞し讃岐守としての任にあたった時、いち早い帰京を望んでいたことなんかは初めて知った。また宇多帝の親政、藤原氏の台頭、学者間のいざこざ、人間関係に揉まれながらも職務を全うしたあたりは見習いたいです。2012/05/28