内容説明
「アメリカの国民芸術」と言われる短編小説。その豊穣でドラマチックな世界を、開祖E.A.ポーから21世紀のEジン作家出現まで、そして雑誌・編集者・評論家の活躍、原稿料・ボツ原稿・文学賞・ベスト作品といった興味津々の具体的な裏情報を駆使して案内する、ユニークな歴史エッセイにして新しいアメリカ文化入門。52講は、どこからでも自在にアプローチ可能。
目次
イギリスからの波
アメリカの国民芸術
新体制の登場
ダーティ・リアリズム
女たちの台頭
「時間」と「希望」
ベストのなかのベスト
男の目
短編を愛した女
ベストとは?〔ほか〕
著者等紹介
青山南[アオヤマミナミ]
1949年、福島県生まれ。翻訳家、エッセイスト。早稲田大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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三柴ゆよし
10
短篇から見るアメリカ文学史。アメリカ文学における創作科の内実と位置付けって俺のなかで謎のひとつだったのだが、これを読むとなんとなくイメージできるのでえらい。2015/04/29
Edo Valens
4
アメリカ短編小説の世界を縦横無尽に遊びつくす試み。「秘史」というほど隠された歴史でもないのだが、日本からではアクセスしにくい、アメリカの現場の姿を軽い語り口で伝えてくれる。合衆国の短編小説の世界は時間的にも地理的にも、そしてそれぞれの雑誌的にもとても広大であることがうかがえ、それぞれの場所で作家が奮闘している姿が伝わってくる。52講はそれぞれ緩くつながりがあり、作家や編集者のエピソードも満載であるので、読みだすと止まらない。"in one sitting" とまで言わなくても、楽しく読めてしまった。2017/01/26
azimuth
2
フランク・オコナーいわく、短編小説はアメリカのa national art formである。おお、言い切るな。実際に、短編小説という文学の形式は、米国において軽んじられることなく、商業主義によって損なわれそうになっても、そこにたとえばオブライエンみたいなヒーローが現れて救ってくれるのでした。ダーティーリアリズムという新体制、雑誌ニューヨーカーの歴史やら、各文学賞の特徴、大学の創作科の立ち位置など、きちんと把握するいい機会だった。2011/10/23
RforE
2
知らないことが多すぎた。これから色々読みたい。2008/07/17
吉美駿一郎
0
読後、頭に残っていたのはワイズマンの言葉。 〈アメリカを支配する保守のイデオロギーは「順応」を説教している〉 〈(自分とは立場の異なる話であっても)じぶんたちに慣れた言葉で考えようとするのである〉 これに続く青山のコメント〈ひとはみなおなじ、という一見善意にみちた楽天的な考えかたは、ときに高慢で差別的〉、これもすごく響いた。2017/06/06