内容説明
ヘーゲル、マルクス、ヴェーバーらの読み直しによって、コミュニケーション行為論を基礎とした批判的社会理論の構築を目指す、初期ハーバマスの記念碑的作品の全面改訳版。
目次
1 労働と相互行為―ヘーゲルの「イエナ精神哲学」への註
2 “イデオロギー”としての技術と科学
3 技術の進歩と社会的生活世界
4 政治の科学化と世論
5 認識と関心
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
大ふへん者
4
要再読。初ハーバーマスだが全体的に難解で面喰らった。とりわけ第一章のヘーゲル他ドイツ観念論における精神の定立理論は、初見では歯が立たない。2014/03/01
八八
3
ユルゲン・バーバマスは公共圏におけるコミュニケーションの可能性について論じた社会哲学者である。本著の『イデオロギーとしての技術と科学』は科学や技術による合理化が今までのマルクス主義などのイデオロギーを脱色し、その生産力に支えられた"よき生活"は階級闘争を無意味なものにしている。このような科学や技術の作用は目的合理化という働きによるものである。つまり、目的合理化というイデオロギーが展開し我々の社会や政治に不可分に浸透しているのである。2020/03/25
抹茶ケーキ
3
イデオロギーは伝統的社会では唯一絶対のものと見なされるが、近代に突入した社会では妥当性を維持する必要が生じる。そのためイデオロギーは目的合理性を追求することで妥当性を維持しようとするようになり、晩期近代ではますますその傾向は強まっている。みたいな話。かなり反体制的で面白かった。2016/06/28
有沢翔治@文芸同人誌配布中
2
ヘーゲルは欲望から自我へ、自我から自己意識へ、そして自己意識から国家へ、と至る道筋を考えた。自己意識へと向かう過程で「労働」が重要となる。労働は他者のために行なうのだ。第一章ではヘーゲル、マルクスがどのように労働を捉えていたか再検討が行なわれる。そして二人の時代から20世紀にはいって科学がどのように変化していったのかを考えている。端的に言えばマルクスの時代までは生産を効率化させるための科学であったのに対し、20世紀はいかに効率よく人を動かすか考える科学にシフトしていったとハーバーマスは指摘する。2017/01/06
Fumitaka
1
我々の生活様式は技術や科学に文字通り結びついている。そして人間は、自分たちに見慣れた価値観の中でのみ物事を判断しようとするのが常である。ここに、屡々「中立的」と思われる技術や科学が、むしろ柔軟な思考を拒絶する色を帯びるようになり、更に宗教や神話といった伝統的な価値観もそれを補填する形で存続する、とハーバーマスは論じる。「大衆の非政治化」「隠される階級闘争」とかは、確かに「右でも左でもない」と称する国粋主義者や原子力村を賛美する「左翼」などが跳梁する現代日本の惨状を考えると迫真的に感じられる。2019/12/23