内容説明
お家乗っ取りを策謀する黒幕のもとから、五人の刺客が江戸に放たれた。家中屋敷の奥まで忍びこんで、藩士の非違をさぐる陰の集団「嗅足組」を抹殺するためにである。身を挺して危難を救ってくれた女頭領佐知の命が危いと知った青江又八郎は三度び脱藩、用心棒稼業を続けながら、敵と対決するが…。好漢又八郎の凄絶な闘いと、佐知との交情を描く、代表作『用心棒シリーズ』第三編。
著者等紹介
藤沢周平[フジサワシュウヘイ]
1927‐1997。山形県生れ。山形師範卒業後、結核を発病。上京して五年間の闘病生活をおくる。’71(昭和46)年、「溟い海」でオール読物新人賞を、’73年、「暗殺の年輪」で直木賞を受賞。時代小説作家として、武家もの、市井ものから、歴史小説、伝記小説まで幅広く活躍。『用心棒日月抄』シリーズ、『白き瓶』(吉川英治賞)、『市塵』(芸術選奨文部大臣賞)など、作品多数
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感想・レビュー
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ミカママ
501
【海坂藩城下町 第9回読書の集い「冬」】シリーズ最終作を読んだばかりだが、本棚にあったこちら、ふと表紙を見たらシリーズ第二作目ではないか?!背表紙には「用心棒…」の文言がなくうっかり見逃しておった(お江戸風に)。又八郎はまたしても江戸詰めとなり、佐知と嗅足組を守れ、との密令とともに。今シリーズが読みやすいのは、武家ものであると同時に人間ドラマも楽しめ、ときおりはさまれるユーモア、そしてもちろん佐知と又八郎の不倫の哀切な関係・・・といったところ。めちゃくちゃ好みだ。残りの2作も手に入れたい。2024/01/16
yoshida
187
用心棒日月抄第三編。藩主の伯父寿庵保方は積年の野望を行動に移す。藩主の座を狙い、江戸屋敷を牙城とし、藩の隠密集団「嗅足組」を抹殺し自身の隠密集団を作るべく、江戸に五人の刺客を送り込む。「嗅足組」の女棟梁である佐知の父・谷口権七郎から命を受け、江戸へ向かう。佐知の身に危険が迫る。共に刺客と闘いながら想いを寄せ合う青江と佐知。青江は妻子あり実らぬ二人の想い。それでも良いと思う佐知の健気さにやられる。藤沢周平さんの熟練の作品。緊張感ある立ち回り。通いあう青江と佐知の想い。これは青江と佐知の物語である。名作です。2016/06/12
ヴェネツィア
142
用心棒シリーズの完結編。最後は予定調和という感じだが、すがすがしい終わり方だ。又八郎や佐知に会えなくなるのは淋しい気がするが、不本意な脱藩を繰り返すという設定だけに、これ以上はいくらなんでも無理だろう。幸いに藤沢周平の作品はまだまだあるので、これからも少しずつ読みすすめて行きたい。2012/08/30
やいっち
140
入手経路不明。藤沢周平作品何冊目か。活劇場面の上手さや主人公に絡まる女性の魅力、ユーモアタッチの描き方、人情。ただ解説の常磐新平氏に依ると初期作品は時代小説という物語の形を借りた私小説だったと作家自身述懐されてるとか。そう云われると初期作品も読みたくなる。2024/01/26
じいじ
114
用心棒シリーズの第三作。今作は、お家乗っ取りをたくらむ黒幕のもとから、5人の刺客が江戸に向かった。主人公・又八郎も敵を欺くために、またまた脱藩をして江戸へ。頁が進むとともに緊迫感が増してきます。この静かな緊迫感がたまりません。藤沢小説の醍醐味です。女忍び佐知との再会。たった一度だけ愛を交し合ったことは、二人だけの秘密である。ストイックなこの二人が、この物語に清清しさをもたらしています。藤沢周平の代表作のひとつ〈用心棒シリーズ〉も残すところ、あと一作になってしまった。2021/01/04