犠牲者意識ナショナリズム―国境を超える「記憶」の戦争

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犠牲者意識ナショナリズム―国境を超える「記憶」の戦争

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  • サイズ 46判/ページ数 529p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784492212523
  • NDC分類 369.37
  • Cコード C3031

出版社内容情報

ポーランド、ドイツ、イスラエル、日本、韓国――
犠牲者なのか、加害者なのか?
その疑問から記憶を巡る旅が始まった!
韓国の各メディアが絶賛した話題作、待望の翻訳!

***

 2007年1月18日朝、新聞を広げた私は首をひねった。購読する進歩系と保守系の新聞どちらも、『ヨーコの物語』(邦訳:『竹林はるか遠く:日本人少女ヨーコの戦争体験記』を批判する記事が文化面トップを飾っていたのだ。どうということのない本のように思えたが、驚くほど大きな記事だった。

 韓国メディアの激しい批判は、「韓国民族イコール被害者」「日本民族イコール加害者」という二分法が揺さぶられたことへの当惑を表すものだったのだろう。避難する日本人女性を脅し、強姦する加害者という韓国人のイメージが日本の植民地支配に免罪符を与え、歴史を歪曲するという憂慮が行間から読み取れた。

 その心情は理解できるものの、その二分法が常に正しいわけではない。韓国が日本の植民地主義の被害者だったというのは民族という構図でなら正しいが、個人のレベルでは朝鮮人が加害者に、日本人が被害者になる場合もある。個々人の具体的な行為ではなく、集団的所属によって加害者と被害者を分ける韓国メディアの報道は、「集合的有罪」と「集合的無罪」に対するハンナ・アーレントの批判を想起させた。

 それ以上に興味深かったのは、論争の火が遠く離れた米国で広がったことだ。米国で6~8年生向け推薦図書リストにこの本が入り、ボストンとニューヨークに住む韓国系の保護者たちが2006年9月に異議を唱え始めたのが始まりだった。
『ヨーコ物語』騒動を見ながら、私はドイツとポーランド、イスラエルの記憶の戦争を思い出し、「犠牲者意識ナショナリズム」という概念を思いついた。

(はじめにより)

***

【犠牲者意識ナショナリズム】
植民地主義や二度の世界大戦、ジェノサイドで犠牲となった歴史的記憶を後の世代が継承して自分たちを悲劇の犠牲者だとみなし、道徳的・政治的な自己正当化を図るナショナリズム。グローバル化した世界で出会った各民族の記憶は、互いを参照しながら、犠牲の大きさを競い、絡み合う。記憶が引き起こす歴史認識紛争がいま、世界各地で激しさを増している。

内容説明

日本の戦争犯罪と原爆被害に関する東アジアは記憶文化はホロコーストの記憶を参照し、慰安婦の記憶は逆に、戦時性犯罪と暴力的売春に関する欧州の眠っていた記憶を呼び覚ます。犠牲者意識ナショナリズムは、地球規模の記憶空間において互いの経験を取り込みながら自らの正当化を図っている。歴史の誤用と濫用すら辞さない、大陸を超えた競合と競争を分析する本書は、犠牲者意識ナショナリズムのグローバル・ヒストリー、より正確にはそれが引き起こす「記憶の戦争」に関するグローバル・ヒストリーである。

目次

記憶のグローバル・ヒストリーへ向けて
系譜
昇華
グローバル化
国民化
脱歴史化
過剰歴史化
併置
否定
赦し
記憶の連帯へ向けて
記憶の歴史

著者等紹介

林志弦[イムジヒョン]
韓国・西江大学教授、同大学トランスナショナル人文学研究所長。1959年ソウル生まれ。1989年西江大学博士(西洋史学)。韓国・漢陽大学教授、同大学比較歴史文化研究所長などを経て2015年から現職。専門は、ポーランド近現代史、トランスナショナル・ヒストリー。ワルシャワ大学、ハーバード燕京研究所、国際日本文化研究センター、一橋大学、ベルリン高等学術研究所、パリ第2大学、コロンビア大学などで在外研究と講義を重ね、各国の研究者と共にグローバル・ヒストリーという観点から自国中心の歴史を批判してきた。現在は、記憶の研究に重点を移し東アジアの歴史和解を模索している

澤田克己[サワダカツミ]
毎日新聞論説委員。1967年埼玉県生まれ。慶應義塾大学法学部卒業。在学中、韓国・延世大学で韓国語を学ぶ。1991年毎日新聞社入社。ソウル特派員、ジュネーブ特派員、外信部長などを経て2020年から現職。著書に『「脱日」する韓国』(ユビキタ・スタジオ)、『韓国「反日」の真相』(文春新書、アジア・太平洋賞特別賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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ぐうぐう

43
手厳しい一冊だ。タイトルにある犠牲者意識ナショナリズムとは著者の造語なのだが、犠牲者であることを殊更主張することで加害者でもある一面を薄めることを意味する。日本の場合、唯一の被爆国という犠牲者意識が戦時における加害行為(南京大虐殺や慰安婦問題等)を相殺する傾向にある、といったことがそれにあたる。その手厳しさは日本に限った話ではない。著者の自国である韓国の、絶対悪としての日本を責める意識が日本軍を支えていた朝鮮人の蛮行に目を伏せ、朝鮮人BC級戦犯問題を隠す行為にも言及する。(つづく)2023/02/17

Nobuko Hashimoto

30
植民地主義や戦争、虐殺の記憶を後の世代が継承し、自分たち全体を犠牲者だとみなして自己正当化を図る「犠牲者意識ナショナリズム」について分析、考察した本。ポーランド、ドイツ、イスラエル、日本、韓国と対象も広く、大変興味深い。ここまで濁さずに記述されたことに敬意を表したい。来年度の輪読テキストにしようかな。ただ、用語の定義がされないまま話が進んでいくなど、読みにくさもある。書籍化するときに、総論となる部分を補論として最後に載せたことが要因か。テキストにするなら補論を一番に読もうかな。2023/07/11

まると

27
歴史認識を巡る対立に焦点を当てた本は幾つか読んできたが、グローバルな視点から各国の現象をアナロジカルに分析したものはなかったので、とても勉強になった。昨年の刊行物では現時点でベストブック。多くの人に読んでほしいと思える内容でした。考え抜いて紡ぎ出したと思われる言葉が重く、母国にも厳しい視線を投げかけるなど、著者の中立的な姿勢が好もしい。戦時中の犯罪行為を呼び覚ます民族主義は、冷戦後に勃興した世界的な動きなのだと再認識した。ドイツとポーランドのカトリックが互いを赦すことを土台に和解を遂げたことは示唆に富む。2023/03/28

BLACK無糖好き

24
原著は2021年刊。翻訳版刊行時の注目度の高さから図書館の予約が殺到。熱りが冷めるのに一定期間を要す。多大な犠牲を被った経験を次世代に世襲する「犠牲者意識ナショナリズム」と、それを構成する「記憶の歴史」についての考察。植民地主義やホロコーストなどの記憶がグローバルに絡み合う様も描く。著者はポーランド近現代史が専門とのことで、ナチズムとスターリン主義の犠牲者であるポーランド(大戦の死者数は人口比最多)が、ユダヤ人虐殺に加担した歴史にどう向き合ったのか、ここの分析は読ませるものがある。2023/10/03

Toska

22
良書。国境を超えた被害・加害の記憶が他の記憶と出会い、連携し、グローバル化する一方で、熾烈な「再領土化」争いの対象ともなる。世界的な悲劇のシンボルとして認知されたアウシュヴィッツに、慰霊のため十字架を立てるか否かでポーランド人とユダヤ人が激しい論争を展開したのは象徴的。そもそも犠牲者意識ナショナリズムは、国境の反対側の「加害者」がいなければ成り立たない、優れてインターナショナルな存在なのだという。2023/09/18

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