出版社内容情報
なぜ日本は国際協調を捨てて戦争へと向かったのか。国際関係史の知見から、一九二〇年代日本に本当は存在していた「戦争を避ける道」の可能性を掘り起こす。
内容説明
一九二〇年代の日本は、国際連盟の常任理事国に選ばれ、不戦条約にも調印し国際平和をリードする大国として世界の期待を集めていた。だが、三〇年代になると日本は一転して国際協調を捨て、戦争への道を歩んでいく。当時、戦争を避ける選択はありえなかったのだろうか。日米関係を中心に長年研究を積み重ねてきた碩学が、その最新の知見を、従来の日本近代史の豊富な実証研究の蓄積へと接合。二〇年代日本にとって本当は存在していた「戦争を避ける道」の可能性を掘り起こす。
目次
プロローグ
第1章 ヴェルサイユ会議と日本
第2章 ワシントン会議と日本
第3章 米国の日系移民排斥と反米感情の噴出
第4章 中国の国権回復と米英ソ日の対応
第5章 山東出兵と張作霖爆殺事件
第6章 ロンドン海軍軍縮条約から満州事変へ
エピローグ―戦争を避ける道はあった
著者等紹介
油井大三郎[ユイダイザブロウ]
1945年生まれ。東京大学名誉教授、一橋大学名誉教授。専門は日米関係史、国際関係史。東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。博士(社会学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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樋口佳之
35
在中邦人の保護措置と並行して、中国の国権回復運動に一定の譲歩を行うことによって、中国の排日運動を緩和させ、満州利権の一部を中国との交渉で確保する可能性はあった…英国が、漢口や九江の返還に応じて、香港を確保したように。そうすれば、関東軍による暴走は事前に抑止できた/米英が中国で「帝国縮小戦略」に転換したのも、中国側が激しく「新外交」の実施を要求したことに応えざるをえなかった結果/第一次世界大戦後の世界が、「旧外交」から「新外交」への転換期にあったという世界史認識は、…現在の日本でも十分深められていない2020/08/07
Porco
16
1920年代の日本の外交が整理されて述べられていて、わかりやすい。日本国内の政治を追うのと外交を追うのとでは、戦争を避けられたと思われるポイントが違うのですね。2021/12/18
あまみ
11
いろいろ資料、論説から導き出している。本書の題名「避けられた…」にはたどり着いたか?戦前の日本での事象はおそらく客観的に取り上げている。それに比して米英中のそれが少ない。著者の専門は日米関係史、国際関係史なのだから出せるとは思う。日本だけが何かをする、しないかだけ指摘しても避けられないだろう。エピローグで避けるチャンスはあったと述べている。そして突然、2015年の安部談話を批判しているのは奇異に思った。さらに本文でほとんど出ていなかった韓国を持ち上げている。これが著者の書きたいことだったのかと勘繰る。2021/12/12
Hiroo Shimoda
9
歴史のifがあり得たかの検証。大戦は避けられたのかもしれない。原因の一つは国民のプライドと感じた。日露戦争で得た自信、白人優位への反発、中国への上から目線。では今の日本人はどうだろうか?2021/02/15
spanasu
5
第一次世界大戦後の世界は旧外交と新外交の転換期にあったとし、その画期に日本が乗り遅れたとする。日本部分は他の研究に依拠しているため、移民関係や米国の将来の日米戦争予想は私が詳しくないのもあるが興味深く、どうせなら専門のアメリカにもっと重点を置いてほしかった。中国の国権回収運動に応じ、在外邦人保護にも対応していれば、イギリスの香港のようにある程度は権益を保護しつつ戦争は避けられたのではないかという主張だが、なぜできなかったのかには曖昧なままであり、そこが研究点であろう。2020/08/19