出版社内容情報
2020年からの入試で民間スピーキングテストが課されることの危険性を、政策・実施の観点から多角的に検証。
内容説明
英語を「読む・聞く・話す・書く」4技能を伸ばすためとして、2020年度から実施される「大学入学共通テスト」に「スピーキング」が課され、それが民間試験に全面委託されることは、大きな問題点を孕んでいる。拙速・強引な政策決定のプロセス、成績評価のあり方、高校教育や入試全体に及ぼす影響など、教師、研究者、実践者たちが多角的に検証。教育関係者、保護者、受験生にこの実情はまだ知られておらず、実施を前提に突き進んではならない。
目次
1 英語入試改革の現状と共通テストのゆくえ
2 高校から見た英語入試改革の問題点
3 民間試験の何が問題なのか―CEFR対照表と試験選定の検証より
4 なぜスピーキング入試で、スピーキング力が落ちるのか
5 高大接続改革の迷走
著者等紹介
南風原朝和[ハエバラトモカズ]
1953年生まれ。東京大学理事・副学長等を経て、東京大学高大接続研究開発センター長、大学院教育学研究科教授。日本テスト学会副理事長。専門は心理統計学、テスト理論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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おさむ
33
迷走の末に中止が決まった英語入試。その問題点を指摘する本著が出版されたのは2018年6月。関係者は早くから問題点を指摘していたのに、政府は民間業者を導入する為だけに突き進んだ事がよくわかる。新聞でも報じられていたが、推進役は下村博文文科相と楽天の三木谷浩史。その背後には過熱する英語ビジネス業界がある。興味深かったのは、日本語は話し言葉と書き言葉の間に大きな差があり、知的話し言葉の伝統がない。これが英語との差で日本人の英語下手にもつながっているとの指摘。論理的な話し方の不得手につながっている気もします。2020/02/13
tellme0112
12
お世話になった入試試験がどのように作られてきたのか、初めて知った。子どもは新入試の対象におそらくなる。諸外国の例をもっと知りたいと思った。2020/01/12
ゲオルギオ・ハーン
7
主旨の違う複数の試験(TOEICやGTECや英検、TOEFLなど)を無理に画一的な評価に嵌め込む時点で乱暴な考えだ。毎年各試験についての評価が変わり実施の公平性に疑問があるという開始前から破綻している試験制度。文科省を責めるのは簡単だけど、発端は英語ができないと騒ぎ立てた大企業群や英語ビジネスでさらに儲けようという企業、それと癒着した大臣たちによる「有識者会議」の決定が問題のように読めた。大人たちによるいい加減な英語試験制度に翻弄される学生や家庭が企業の餌食になる試験制度は再考すべきではないだろうか。2020/05/29
Schuhschnabel
5
以前からこのテーマに関しては注意を払っていたが、この本を読んで、一介の大学生など無力とはわかってはいても、何かしらの行動を起こさないといけないなと考えを改めた。かくいう自分も英語は苦手でかつ嫌いなので、積極的にこうするべきだということを言う資格はないのだが、試験段階をほとんど経ずに、相当数の高校3年生の人生を大きく左右する試験に民間試験を導入するというのは、どう考えても道理にかなわないだろう。2018/07/06
taverna77
5
英語入試の問題点、見通し(暗い…)、高校からの視点、大学からの視点、CEFR基準の危うさ、そもそもスピーキングの力とは何か、高大接続のおかしさ、などを5人の識者が書いている本です。着目すべき点をわかりやすく語ってくれます。特に最後の荒木克弘さんの文章は説得力があります。2018/07/04