出版社内容情報
●内容
個体群生態学は,数理モデルがもっとも浸透している生物学の一分野である.この本では,代表的な個体群生態学のモデルについて,その導出方法を,誰にでもわかりやすく噛み砕いて説明した上で,そのようなモデルによってデータや現象を理解することの有効性を,さまざまな例を通して読者に語りかけている.原著の副題「First Principles;第一原理」という言葉には,著者から読者へ込められたメッセージが読み取れて,「もっとも根源的な要素からの現象のメカニズムの説明」とか「わかりやすさ」ということなのだろうと思う.いたるところに現れるグラフや図も,読者に対して,理解の助けとなったり,著者とイメージを共有することにも役立っている.読者の対象としては,大学学部で生態学を専攻している学生であるが,個体群生態学の数理モデルを理解したいと思うすべての人にとって,非常にわかりやすいガイドブックになっている.本書で使われている数学は,高校から大学初年級程度であるが,ふだん数学とは疎遠になっている読者にとっては,初歩的な線形代数の計算方法をまとめている章が役に立つだろう.指数成長モデルから始まって,密度効果の歴史的背景とそのもっとも単純なものとしてのロジスティックモデルをよりどころとして,生活史のモデルや年齢・生育段階構造の入った行列モデル,捕食者-被食者モデル,疫学モデル,種間競争モデルが,バランスよく配置されている.また,モデルのダイナミクスだけに焦点を置いて詳しく扱った章や,メタ個体群の部分は,類書にはあまり見られない特徴である.
[原著名:Population Ecology : First Principles]
内容説明
本書は、生態学の中の1つの学問領域である個体群生態学という学問を、もっとも基本的なところから噛み砕いて説明したものである。数学的な理論を使って発展してきた個体群生態学という学問に対して、基本的で定量的な原理を示している。各章で、多くの生態学の具体的な事例を示し、現象をもっとも基本的な過程から記述した。
目次
1 個体群動態の原理
2 生活史の解析
3 推移行列・齢構成モデル
4 個体群動態に現れる「ダイナミクス」の詳説
5 空間パターンとメタ個体群
6 捕食者‐被食者(消費者‐資源)相互作用
7 疫学
8 競争と共生
9 この本で書かれていたこと
著者等紹介
佐藤一憲[サトウカズノリ]
1993年九州大学大学院理学研究科博士後期課程修了。静岡大学工学部・助教授・理学博士。専門:数理生態学、空間構造をもつ集団の生物学、確率的ダイナミクスに従う集団の生物学
竹内康博[タケウチヤスヒロ]
1979年京都大学大学院工学研究科博士課程修了。静岡大学創造科学技術大学院・教授・工学博士。専門:生物数学
宮崎倫子[ミヤザキリンコ]
1992年大阪府立大学大学院工学研究科博士後期課程中退。静岡大学工学部・助教授・博士(理学)。専門:関数方程式論
守田智[モリタサトル]
1997年京都大学大学院理学研究科博士後期課程修了。静岡大学工学部・助手・博士(理学)。専門:非線形動力学、統計物理学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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