出版社内容情報
西洋哲学の祖と仰がれながら,しばしば通俗的理解に歪められてきたプラトンの哲学.イデア論を中核とする思想の展開と達成,現代における意義など,プラトン哲学の核心を,研究の第一人者が平易に語る最上の案内書.
内容説明
透徹した原点の読みに深く根ざした最上の案内書。
目次
序章 「海神グラウコスのように」―本来の姿の再生を
「眩暈」―生の選び
「魂をもつ生きた言葉」―プラトン哲学の基層としてのソクラテス
「美しき邁進」―イデア論とプシューケー論
「汝自身を引き戻せ」―反省と基礎固め
「美しく善き宇宙」―コスモロジーに成果の集成を見る:「果てしなき闘い」―現代の状況の中で
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ころこ
49
言葉遣いは平易なものの、昔の新書なので今よりも論旨が明確でないのはタイトルに現れてもいる。恐らく最も長い第4章と、その流れを汲む第5章と合わせてイデア論が本書の中心であり、イデア論の不備に対するプラトンの思索が論じられている。『ゴルギアス』『パイドン』『国家』『パルメニデス』と著作間での変遷が、『テアイテトス』では知覚を分析して物的実体を消去して知識が成立するための経験的立脚点を示す。2023/11/17
俊
24
プラトンの思想の本来の姿をイデア論をメインに据え概説している。具体例を挙げて説明しているので、イデアに関しては多少掴めたように思う。現実の猫は<猫>のイデアを分有しており、我々がそれを知覚して<猫>のイデアを想起するから、猫として認識する。多分。プラトンの「よく生きる」ための哲学は、個人としては魅力的に感じるけれど、これを現代の様々な問題の処方箋とするのは厳しいのではなかろうか。具体的な手段が全く見えてこない。初学者には難易度が高い本だったけれど、普段とは全く違う思考の枠組みを体験できて面白かった。 2015/01/11
藤月はな(灯れ松明の火)
23
口頭による質疑への「無知の知」を説いたソクラテスの弟子であるプラトン。「実質を越えた本質的な何か」を重要視するプラトンがソクラテスの像に託したイデア論が現在では通じず、「実質は実質でしかない」とアリストテレスのソクラテス像が現在では通用している。しかし、プラトンの物質ではなく、精神性を重んじる風潮は現在でも宗教やホスピスなどの形として人々の心へと問い続けている。2013/04/13
mstr_kk
17
平易な文章でありながら、密度が高く、意外に手ごわい本でした。結局3回読みました。斎藤忍随の『プラトン』と補い合うような内容で、こちらは斎藤本に比べると理論の解説が詳細です。プラトンの哲学を、「イデアを探究する生き方」と「物を求める生き方」との対立のさまざまな変奏として解説してくれて、なかなかわかりやすいのですが、第V章はロジックが難しいのでは?また、プラトンの哲学を現代へつなげようとする第VII章は、提言というよりも説教になっており、いただけません。この程度の説教なら、プラトンを知らなくてもできるので。2017/04/16
angelooo7
16
これが学者先生の文章なんですね・・・すご・・すぎ。。。圧巻圧倒の連続。とても高度な内容のはずなのにアラ不思議スラスラ読める。用語の解説だけでなく、「なぜプラトンは哲学したのか」と言う。根本の思想的闘い。現代を生きる「私」がプラトンから受け取るべき「生きる」本質と「よく生きる」ための果てしなき闘いのレコード。とても熱い本だと感じた。2015/02/14