内容説明
詠うことが生きる歓びだった時代、艶めく慕情に焦れる女歌人、幽玄の美を確立する定家、出家漂泊の西行、悲運の鎌倉将軍実朝、中世初期に華開いた歌の響宴。
目次
新古今の女歌人たち
新古今和歌集(成立;歌風と方法)
山家集(西行家集の諸本;詠歌―旅と修業の生涯)
金槐和歌集(夭折;実朝の歌―方法と歌風)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
だまし売りNo
33
「大海の磯もとどろによする浪われて砕けて裂けて散るかも」源実朝の代表的な和歌である。波がぶつかる姿を容易に思い浮かべることができる。「われて」「砕けて」「裂けて」「散るかも」と三文字・四文字に分かれたリズム感が良い。実朝は和歌が韻文であることを理解している。 2022/10/31
おおた
13
薄いからとあなどるなかれ。新古今和歌集を初めとした鎌倉時代に成立した和歌集について、基本的な情報はもちろん、読み方や成立の歴史について写真入りで解説されている。和歌集に触れずに本書を読むのは意味がないけど、興味のとばぐちにはなるかも。京都や鎌倉、はては後鳥羽上皇が流された隠岐の写真を見て、自分でも彼の地を踏み、1000年近く前に生まれた感情と三十一文字を思い返してみたい。2017/01/17
かみしの
7
本書で主として取り上げられる後鳥羽院・定家・西行・源実朝を始め、藤原俊成、鴨長明、慈円、寂蓮など多くの文化人が生き、交流した時代のことを考えるとわくわくしてしまいます。中世初期の三大歌集の性質と、代表歌のアウトラインを、数多くの図版とともに解説してくれているので、入門にはうってつけなのではないでしょうか。定家の『百人一首』と、実朝の『金槐和歌集』が、ともに後鳥羽院への慕情を、集を挙げて表明しているというのは、なかなか面白い気がします。文化人を惹きつけてやまなかった後鳥羽院の魅力が垣間見えるようです。2013/01/10
半べえ (やればできる子)
0
★★★2022/07/19
果てなき冒険たまこ
0
定家の新古今和歌集、西行の山家集、そして源実朝の金槐和歌集。この3人を中心に資料もたっぷりで中世和歌の世界を堪能できる。残念なのは少し判が小さくて見にくい読みにくいことだけど中身はとても充実していた。特に今まで気にしていなかった源実朝の実力。悲劇の将軍の側面ばかり取り上げられがちだけど、この人が長生きしたら和歌の歴史は少し違っていたのかもと思えてしまう。まぁそれは無いものねだりなのはよくわかってるけど。2022/06/30