内容説明
他人の悩みはいつの世も蜜の味。これは大正時代に新聞紙上で129人が相談した、ニッポンの悩みカタログだ。「芸者になるには声が悪い」「妻が処女でなかった」「娘の求婚者が醜いので断りたい」「お尻の大きい少年の僕」「何不自由ない暮らしだが空しい」―。どうかと思うあきれた悩み、身につまされる深刻な悩みがそれぞれに時代を映し出し、つい現代のわが身を省みる。
目次
清ク正シキ乙女ノ困惑
アドケナキ少年ノ苦悩
ソロソロオ年頃、ノ憂鬱
アァ青春ノ懊悩
進路ヲ決メルニアタッテノ混迷
縁談、結婚ニ関スル逡巡
結婚シナイカモシレナイ女ノ問題
困ッタ夫ニ対スル妻ノ閉口
妻ニ手コズル夫ノ煩悶
結婚生活ノ危機ニ際シテノ苦悩
昔ノ恋人ニ揺レ動ク心
主義主張ニ生キル人ノ苦悶
“バツイチ”ノ戸惑イ
道ナラヌ恋ノ悶エ
仕事、職場ニマツワル問題
性格ニツイテノ思惑
悩ミナキ人ノ難問
イササカ面目ニ欠ケル悩ミ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さおり
70
大正時代だからって、結局変わらんのね。最後の方に、虫が嫌いなことを相談する主婦が出てきます。記者さんは慣れろと回答していたけど、それができれば苦労せんわよ。みかんを食べすぎる旦那さんのことを相談した新妻には、みかんだけでなくリンゴなども勧めなさいと書いてた。ちょっと笑えました。2016/10/21
佐島楓
67
大正時代というのは私の曾祖母の青春期、考えてみるとそう遠い時代でもないんだなと思える。自分の品行を棚に上げてやたら理論武装する殿方とか、現代にもごろごろいるだろう。2019/02/12
ばう
50
★★★大正時代の人々のリアルな暮らしが伝わってくる。新聞の人生相談に寄せられた悩みは様々で哲学的なものから進路、性格、恋愛、夫婦間の悩み、人間関係と実にバラエティ豊か。お尻が大きいと悩む男子、一度にみかんを20個も食べる夫など奇妙奇天烈な相談もあるけれど、起業したいという女性や職業婦人の出産問題、 仕事が面白くなくて「僕には他にやりたいことがあるのでは?」と悩む若者とか、根本的には現代とそう変わらないのかな、と感じました。でも一番凄いと思ったのはどんな相談にも的確な答えを出して下さる記者様です。(≧∀≦)2017/05/10
ネギっ子gen
39
【他人の悩みは、いつの世も蜜の味!】大正時代の読売新聞から129件を抜粋。「人並みの背になりたい」の相談に、「身長ゴム」広告も併せて掲載の小技が嬉しい。「勝気でわがままな妻」に悩み、「ほとんど手のつけようがなく、思案に暮れて、ただ涙に咽ぶのみです」と訴える夫への回答は、「家長たる日本男子が、そんな泣き言を言ってるから、女は増長するのです」的なお説教が来ると思いきや、同情的でしてね。「どうにも困ったものです。脳に異常があるのではないかと思われますから、精神を専門にする医者に診てもらいなさい」と。そうきたか。2019/11/06
shikashika555
38
メディアが活字媒体のみだった時代の『社会の木鐸』某新聞に大正三年から毎日掲載されていた悩み相談を抜粋。 風俗記事は世相を写し、時代の価値観を反映する。 かの時代はこのような価値観で人々が生きていたのかと興味深く読めた。 本書は2002年初版。編纂者のコメントにも時代を感じ、価値観の変遷を思う。 悩み相談回答記者による直接的で真摯な回答には感服することが多かったが、時折滲み出る身も蓋もない切り捨てには思わずビックリ。 青春の懊悩に対する「冷水で頭を洗って散歩せよ」とのアドバイスは果たして有効なのか(笑)2020/10/12