内容説明
ダイナマイトを発明して巨万の富を得たノーベルが皮肉にも自らの狭心症の治療のためにその原料として利用したニトログリセリンに頼ったという話から始まって最近の遺伝子治療の話まで、人間の歴史の中で活躍した化合物の物語である。研究の最先端における人間どうしの壮絶な闘い、誇り、葛藤、苦悩が生き生きと描かれている。内容的には著者の専門の医薬に関連深い化合物が多く選ばれているが、その範囲にとどまらず、化合物の物語を通して化学の向こうに広がる魅力あふれる人間とのかかわりの世界に読者を引張っていく興味津津の一冊である。
目次
ノーベルが欲しかった化合物―ニトログリセリン
生物における右の左の秘密―二種類の酒石酸
漢方薬から覚せい薬―エフェドリンとメタンフェタミン
結晶化された初めてのホルモン―アドレナリン
ビタミン学のはじまり―オリザニンの発見
化学療法のはじまり―トリパンロート
化学者が放った魔法の弾丸―スルファニルアミド
生命現象解明へのアプローチ―インスリンの正体
毒ガスから生まれた制がん薬―ナイトロジェンマスタード
解明されたフグの毒の不思議―テトロドトキシン〔ほか〕