出版社内容情報
突然、ふいと姿をくらましてしまう猫達。この世とあの世を行き来する猫の物語やエッセイをぎゅっと一冊に。猫好きに放つ猫好きによるアンソロジー。
内容説明
「チビや死ぬ時はこっそりと死んでおくれよ…」。佐藤春夫は、愛猫の死に際にこうつぶやいた。愛猫ノラが昨晩帰ってこなかったと知った瞬間に号泣した内田百〓(けん)も、転居を機に痩せてきた猫の最期を見守る夏目漱石も、猫を轢いてしまった男が追いつめられてゆく様を描いた吉行淳之介も、星新一も、武田花も、何の前ぶれもなくあちら側に行ってしまった猫に、涙し、おびえ、悼み、そして書いた。日本の小説、詩、エッセイからえりすぐった、猫好きによる、猫好きのためのアンソロジー。思わずぞくっとして、ひっそり涙したくなる35編。
目次
1 死んだ猫のゆくえ
2 ペット・ロス症候群
3 猫の精霊ばかりが住む町
4 化け猫と不思議な話
5 猫の一族
編者エッセイ 日常と異界の往還
著者等紹介
和田博文[ワダヒロフミ]
1954年横浜市生まれ。神戸大学大学院文化学研究科博士課程(文化基礎論)中退。奈良大学文学部教授、東洋大学文学部教授を経て、東京女子大学現代教養学部教授。ロンドン大学SOAS、パリ第7大学、復旦大学大学院の客員研究員や客員教授を務める。著書に『シベリア鉄道紀行史―アジアとヨーロッパを結ぶ旅』(筑摩選書、交通図書賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
101
文学者たちによる猫に関する作品集第二弾です。最初の方は客観的な猫の死に関するものが多く、その次は猫の死に感情を込めたもので最後は猫にまつわるふしぎな話などが収められています。さまざまな観点からのもので私は1よりも楽しめました。とくに内田百閒や宮沢賢治のものが印象に残ります。2022/02/28
mii22.
76
【にゃんこまつり2020④】「この世界の境界を超える猫」という副タイトル通り、死後の話や化け猫の話など、ゾッとするよう怖さや不気味さもあり、必ずしも猫好きにとって気持ちのいいお話ばかりでない。しかし、多くの天才的な才能をもった人たちの創作意欲を掻き立てるようなインスピレーションを与え続けてきた猫はやっぱり偉大だと思う。猫の魅力はやはり無限大。2020/02/22
sin
64
過去の出来事や物語の中の描写とはいえ猫が死ぬのはやりきれないが、百閒が帰らぬ猫を思って涙を流し、居たと知らされてはその都度妻を知人を走らすは身勝手で子供じみて見苦しい。創作は康隆の青臭さに時の流れを実感し、朔太郎の詩人の誇張にため息し、反してその幻視に感心す。化け猫、次郎の上から目線はともかく譲治の子供心の怖れ等、人間の無知が畏れを呼びよせる。猫の一族、ライオンを虎を豹を猫とは云いがたいが山猫は猫であるようだ?編者の猫との年月は「猫と共に暮らすことは、たぶん二度とない。」と締めくくってその喪失感に胸が痛む2022/12/12
ペグ
57
「猫の文学館II」はその副題にあるように死んだ猫やいなくなってしまった猫達への哀歌に満ちたアンソロジー。好きだったのは小泉八雲 "猫を画いた子供 "。怪談で昔ばなし。流れるように優しい文章。そして例の百閒先生は泪も枯れ果てるまで泣きました。もらい泣きでした。本屋さんで最初に目がいったのはヒグチユウコさんの表紙。こちらも探さなければ!2017/08/23
あたびー
49
1に続いてナイトキャップにと読み始めたのだが、何しろ第1章が「死んだ猫のゆくえ」で、猫の死骸や死に様の描写が続き、第2章は「ペットロス症候群」で百鬼園先生のノラやら佐藤春夫の愛老猫の最期やらで、あまり寝る前に読むものでは無いと思った。 柳田國男「猫の島」はそれほど猫ではなかった。 良かったのは吉田知子「猫」。零落して最底辺の暮らしを営む目の不自由な老女と、気ままな猫の関わりがコミカルなのと、埋め方が浅い土葬の墓から動物たちが色々掘り出してしまう壮絶さの対比が却って生きるということを表していたように思う。2022/05/27