内容説明
ぼくはピエロの人形だ。人形だから動けない。しゃべることもできない。殺人者は安心してぼくの前で凶行を繰り返す。もし、そのぼくが読者のあなたにだけ、目撃したことを語れるならば…しかもドンデン返しがあって真犯人がいる。前代未聞の仕掛けで推理読者に挑戦する気鋭の乱歩賞作家の新感覚ミステリー。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Kircheis
292
★★★☆☆ ピエロの目線が要所で入ってくる。 この設定がいいな~とは思うのだが、残念ながらそこまで活かされてない。 でも真犯人が発覚した時はぞくっとした。2019/01/28
Tetchy
290
東野圭吾はただでは転ばない、これが読後の率直な感想。読者を楽しませるのにこれほど貪欲なのかと改めて感嘆した次第。淡々と物語を綴りながらも最後に思いもかけない真相が作者の手元から次々と現れてくる。正にこれはトランプの神経衰弱に似たカタルシスだ。ピエロの人形の一人称という奇抜な設定に面食らい、多少の不安は感じたが、雲散霧消してくれたし、この企みがきちんと成功していることを付記しておこう。ベストに挙げられる作品ではないものの、一読忘れがたい余韻が残る良作。出版18年以上経って重版されるにはやはり訳があるのだ。2010/01/19
ノンケ女医長
222
35歳の美容師。日焼けした顔で、筋肉質の細身。皮膚にも張りがある、とわざわざ記載があるので、よっぽど稀有な外見の持ち主と思われる。未婚である理由を問われ、「適当の相手が見つからなかっただけさ」と、苦笑して答える。同じような質問を、あらゆる場面で経験し、対応は慣れているのかもと思った。北欧風の二階建て、十字屋敷に通って、専属美容師となるまでの10年間、どれほど複雑な思いを抱えながら、竹宮家の髪や肌を観察し続けて来たのだろうか。親子関係の艱苦に耐え、反撃する信念は、誰も否定することはできない。2023/03/05
Yunemo
211
これが1989年,25年も前の作品なんですか。今日、読み終えても、その新鮮さは変わりません。ピエロに語らせる第三者目線での場面状況説明、書名に合わせたトリック、それぞれの人間模様、確かに引き込まれました!ただ何となく一つのわだかまり、メインの謎解き者の存在が一貫していないところに、若干の不満感が渦巻きます。人形師が最終メイン、ちょっとこの唐突感に。「青江」のキャラクターを最後まで活かして欲しかった、と想うのは私だけ?そうは言っても、作者の意図に翻弄されて、結局満足して読了というのが結果なんです。2014/09/14
夢追人009
198
東野氏が得意とする一族ミステリーにピエロ人形の語りにより読者にヒントをくれるという趣向を加えた本格テイストが目一杯詰まった大どんでん返し推理小説の初期傑作です。本書にはデブとノッポの刑事二人が登場しますが結局は犯人に踊らされるだけの全くの駄目コンビで、探偵役は語り手の女性・水穂と謎の人形師・悟浄ですね。十字屋敷の特殊な形状を利用した奇術トリックや時間差トリックや偽の手掛かりにあまり参考にならないピエロ人形の目撃談の手掛かりと本格ミステリーファンを大満足させてくれますし、二段構えの意外な犯人も秀逸でしたね。2018/08/31