講談社現代新書<br> 自己不安の構造

講談社現代新書
自己不安の構造

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  • サイズ 新書判/ページ数 206p/高さ 18cm
  • 商品コード 9784061456167
  • NDC分類 141.6

出版社内容情報

【内容紹介】
自分にふさわしい個性的な生き方を求めるとき、だれしも「ほんとうの自分」とは何か、という問いに思いをめぐらせる。「私」とはだれか。「私」とは何か。しかし、自己のおおいを取り除く、他人によって規定される私でない私を探りつづけることは、底知れぬ疑いと悩みに出会うことでもある。社会的な存在として、他者との関わりのなかで生きる私たちの抱く不安を、「見られる自己」「見る自己」「根源の自己」の関係性のなかに解明し、不安を生かす道を探る。

生の跳躍台としての不安――全き無不安の状態というものはありえない。少なくも自己の存在するかぎり不安は無とはならない。宗教的安心や悟りを得たという人々でも、不安がないとはいえないであろう。おそらくそのような人々は人生と自己の不安をたじろがず直視する勇気を得た人々なのであろう。彼の心の自由は、むしろ深い不安に裏うちされているのである。生、病、老、死というものを初めて眼のあたりにした若い仏陀がカピラ城を出離したのも、このような不安につき動かされてのことであっただろう。まさに正しく抱かれた不安は、人生の跳躍台である。生きているかぎり、また自己のここに存在するかぎり、いつでも不安はついてまわるものだということを覚悟しよう。――本書より