内容説明
機能不全に陥ったこの国のシステム。もう、ごまかしはきかない。原発危機後を生き延びるために一人ひとりが考えねばならないこと。
目次
第1章 東大話法の本質(虐殺の言語;東大話法とは ほか)
第2章 『原子力安全の論理』の自壊(放射線防護の基本的な考え方;組合せ爆発 ほか)
第3章 田中角栄主義と原子力(田中派の成立と五五年体制の終焉;七二年体制の政治構造 ほか)
第4章 なぜ世界は発狂したのか(ヴェルサイユ条約;ヒトラーの出現 ほか)
終章 結論―脱出口を求めて(子どもに聞くこと;放射性物質からの離脱 ほか)
著者等紹介
安冨歩[ヤストミアユム]
1963年大阪府生まれ。京都大学大学院経済学研究科修士課程修了。京都大学人文科学研究所助手、ロンドン大学政治経済学校(LSE)滞在研究員、名古屋大学情報文化学部助教授、東京大学大学院総合文化研究科・情報学環助教授を経て、東京大学東洋文化研究所准教授、2009年より同教授。博士(経済学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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おおにし
15
第3章の原発を成り立たせている日本の政治構造の話と、第4章のヴェルサイユ条約以降世界は発狂し「見せかけの倫理」が現実だという妄想の世界に我々は生きているという話は一読の価値があり。原発危機の原因も東大話法を駆使する原子力ムラにあるというよりは、現実から我々の目を遠ざけようとする妄想の連鎖の産物なのだ。その妄想の連鎖から逃れて現実へ戻るには我々一人一人が心の蓋を外して、すでに知っている自分自身の答えに気付き感じることから始まるのだという。安冨さんの話を一度自分の頭でじっくり考えてみたいと思う。2013/08/25
wiki
8
姉妹本の『原発危機と「東大話法」』と比べて展開は大きく飛躍する。一見何の関係もないようなところまで話題が飛んで行っているようにも思うが、筆者の語らんとするところは問題ひとつひとつではなく、またその問題が発生したことの直接的な原因だけでもなく、その裏に隠された根源的な違和感に向けられているように思う。欺瞞的な言葉やそれにより作られた施設。原発の話題から世界に目を向けると、世界全体も狂っていたと気づく。人間が、ただ人間らしく生きることを否定してしまった「狂った」世界の変革を訴えかける警世の書であると思った。2017/10/25
kyoko
7
『原発危機と「東大話法」』の続編。隣県の図書館から送ってもらった。本書の前半ではもう息苦しくなるような世界史上の人類の欺瞞が語られているが、最後やっと光が見えてきた。安冨さんの思想の神髄(だとわたしが捉えている)「立場主義」と「子どもを守る」について、わたしがその理解に近づいてきたように思う。並行して毎日職場の昼休みに安冨さんの「生きるための論語」を再読しているが、安冨さんが語る論語の思想は本書に通じるところが多い。やはり思想家の本は全部読むことによって理解に近づくような気がする。まだ9冊目。2021/04/24
Hiroki Nishizumi
3
読み易く内容的にも示唆に富み、とても良かった。角栄主義、ヴェルサイユ条約、PRBC構想など参考になった。これからよくよく掘り下げて行きたい。2013/01/10
winery13
2
東大話法に興味があって手にしたもののこの辺は前作で細述されていたらしく、本書では要素がサラッと紹介されている程度で腹に落ちるまでの理解には至れませんでした。原子力発電依存国家の成り立ちの歴史などの政治への言及中心の本でした。学校教育では教えてくれない部分の話で興味深く読ませて貰いました。2012/11/04