出版社内容情報
啓蒙時代を準備した思想家の、「神なしではすますことのできない」宗教性と「影」を帯びた思想的挫折。
内容説明
自由で平等な市民社会の原理を探究し、民主主義の基礎を築いたジョン・ロック。啓蒙の時代を準備した「光」の思想家の背景には、「神なしではすますことのできない」宗教性と、「影」を色濃く帯びた思想的挫折があった。自由、信仰、寛容、知性…資料と歴史を読み解き、人間にとっての基本的価値を根底から見つめなおす。
目次
プロローグ―実像をもとめて
第1章 生涯
第2章 思想世界の解読―方法の問題
第3章 政治と宗教―「神の作品」の政治=寛容論
第4章 生と知―「神の作品」の認識=道徳論
エピローグ―ロックからの問い
著者等紹介
加藤節[カトウタカシ]
1944年長野県に生まれる。1969年東京大学法学部卒業。1974年東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了(法学博士)。専攻は政治学史・政治哲学。成蹊大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ころこ
40
元々はリバタリアニズムの所有の概念である「プロパティ」がロックを引いているところから本書を参照しています。著者が『統治二論』の訳者と同時に、ゲルナーの訳者でもあったことに初めて気付きました。そういう肩書が簡単な本を書かせてくれないのか、初学者には変化球にみえます。リバタリアニズムは保守主義という認識で、アカデミズム的政治性とポストコロニアリズムの観点で周囲の覚えが良くないことを配慮したのだと推察します。現在の価値観から再評価するのは良いとして、他方で神学的パラダイムが前面に出るのは分かり辛いと思いました。2021/05/21
skunk_c
25
ロックと言えば社会契約や抵抗権で知られる政治思想家として有名(著者によればこれは丸山真男の功罪とのこと)だが、一方で「タブラ・ラサ」(白紙)で知られる生得観念を否定した認識論を持つ哲学者でもあった。この複雑な思想をかなり強引に200ページ足らずでまとめたものが本書。キーワードはキリスト教への信仰。視点は面白いと思うが語り口が平易とは言えず、ロックの思想をある程度知らないと理解は厳しいかな。またエピローグの現代的課題は逆にかなり無理矢理結びつけた印象。やはりこれだけの大思想家をこのサイズでは無理があるか。2018/06/26
ジコボー
18
「寛容の主張」政教分離は昨今のグローバル社会において重要さをより増す。「許し合い」の精神。 考え、思想の背景には必ずその時代や宗教的なものが絡みます。 今の私たちからすると、あり得ないものも当時の常識であった事も多々あります。 ですが、ジョン・ロックの思想の中には現代にも当てはまる普遍的なものもたくさんあります。それらを教えてくれるのが本書。 「理性の限界と有用性との自覚」 理性とは、未来を予測して現在の行動を決めるという側面があり、この理性のモデルを農業のモデルに当てはめていた点が心に強く残りました。2020/02/04
Francis
17
日本ではジョン・ロックは「統治二論」で展開された社会契約説に基づく市民革命を展開した政治思想家、と言う認識なのだが、実際には彼は熱心なピューリタンであり、彼の政治思想、哲学もキリスト教からの展開であることが理解できる。ただ、加藤さんの文章は確かに分かりにくく、おまけにデカルトなどの当時の哲学の考えにロックは近いから西洋哲学には縁の薄い日本人にはなおさら分かりにくいのだ。ロックの思想の全体像が分かる評伝は残念ながら新書サイズでは難しいと思う。2018/10/04
しんすけ
16
数年前に同じ著者による『ジョン・ロックの思想世界』を読んでいるが、本書もほぼ同一テーマが対象になっている。 ただし今回は叙述が具体化されて読みやすいものになっている。 誰もが遠景と近景を持っているのではないだろうか。奇妙な表現かも知れないが。 歴史上の人物なんてものの、ぼく達は遠景のほうで肖像を描いているように思える。なぜなら遠景のほうが変化が少なく対象が把握しやすいからである。 ロックとは十代からの付き合いだから半世紀以上を経ているが、未だに近景が解りづらい人物である。2019/10/09