出版社内容情報
【全日本ろうあ連盟推薦】
ボストンの南に位置するマーサズ・ヴィンヤード島。
遺伝によって耳の不自由な人が数多く生まれたこの島では、聞こえる聞こえないにかかわりなく、誰もがごくふつうに手話を使って話していた。
耳の不自由な人も聞こえる人とまったく同じように大人になり、結婚し、生計を立てた。
障害をもつ者ともたない者の共生----この理念を丹念なフィールドワークで今によみがえらせた、文化人類学者の報告。
【書評再録】
●毎日新聞評(1991年12月9日)=障害者と社会について多くを示唆している文化人類学者の報告。
●共同通信全国配信記事(1992年1月6日~)=差別の元は無知と隔離だと、この島での教訓は雄弁に物語っている。障害者福祉、医療関係者はもとより、広く読んでほしい好著である。
●出版ダイジェスト評(1992年1月21日)=障害をもつ市民が社会に溶け込もうとしたとき、本当に社会の側では、そうした情況に適応したり、そうした情況から何かを引き出したりできるのだろうか。ヴィンヤード島の住民が300年間にわたって経験したことは、この問いかけについて考える手がかりを与えてくれるはずである。
●女性セブン評(1992年4月9日号)=小さな島の昔話にとどまらず、これからの障害者と社会との関係についても、考えさせるところの多い、勇気と感動の書だ。
【内容紹介】本書「訳者あとがき」より
本書でグロースは、300年間にわたって健聴者がごく自然に手話を覚え、ごく自然に手話でろう者と話していたヴィンヤード島の暮らしを、文献資料とオーラル・ヒストリーを駆使して見事に活写してみせている。そうすることでグロースは、だれ一人聴覚障害をハンディキャップと受け取らなかったという意味で、ハンディキャップのない社会が存在し得たことを実証してみせたのである。グロースには、生理的、機能的、個体的レベルを超えて社会的レベルで障害をとらえようとする視点がある。すなわち「国際障害者年行動計画」にあるような、「身体的精神的不全と能力の不全と不利の間には区別があるという認識」をもち、「能力不全を不利にならしめている社会条件」に目を向けようとする視点である。それはいわば、「障害者の側だけに適応の負担のすべてを押しつけ」ようとする社会への異議申し立てといってよい。
本文でもっとも読みごたえがあるのは、おそらく島民によるオーラル・ヒストリーをまとめた箇所であろう。ほとんど表に出てこないので、ともすると忘れがちになるが、ここでグロースが、島民から巧みに話を引き出していることを見逃してはなるまい。ろう者に対するなみなみならぬ理解と共感がなければ、これほどの話を引き出し、またそれを説得力のある形でまとめ上げることはできなかったはずである。
グロースがいう通り、島民はかならずしもろう者の処し方の理想像を与えているわけではない。島民が示したのは、社会の適応によってハンディキャップが取り除かれ得る可能性なのである。ろう者が社会に溶け込むのに手話が大きな役割を果たしたこと、その手話をろう者も健聴者も幼児期に自然に身につけてしまったこと、島には隔離された者同士の同胞意識のようなものがあったこと---などなどといったことは、ろう者と健聴者の共生のあり方を模索している者に、さまざまな示唆を与えてくれるだろう。
もっとも、むずかしい話は抜きにして、各種のエピソードを通じて、ろう者と健聴者がごく自然に対等の立場で接するとはこういうことなのか、こういうことも実際にはあり得るのか---と感じ取ってくれれば、それだけで本書の役割の大半は果たせたことになるのかもしれない。
【主要目次】
▲▲第1章 「ほかの人間とまったく同じだった」
人類学と障害者/情報源
▲▲第2章 マーサズ・ヴィンヤード島の歴史
ヨーロッパ人の入植/漁業全盛期のヴィンヤード島/20世紀
▲▲第3章 ヴィンヤード島の聴覚障害の由来
遺伝性聴覚障害/遺伝の由来/ヴィンヤード島における初期の聴覚障害/ケント州ウィールド地方/ウィールド地方の聴覚障害/清教主義/ウィールド地方からヴィンヤード島へ
▲▲第4章 ヴィンヤード島の聴覚障害の遺伝学
遺伝的隔離集団としてのヴィンヤード島/ヴィンヤード島の聴覚障害の分布/聴覚障害の発生原因に関する理論/島の聴覚障害の消滅
▲▲第5章 聴覚障害への適応
聴覚障害に対する態度/島の手話/手話の研究
▲▲第6章 島でろう者として育つ
幼少期/教育/結婚/家族/生計の維持/くらし向き/政治参加/法的義務/社会生活/共同体の催し物/島で最後のろう者
▲▲第7章 歴史的にみた聴覚障害
▲▲第8章 「あの人たちにハンディキャップはなかった」
内容説明
ボストンの南に位置するマーサズ・ヴィンヤード島。遺伝によって耳の不自由な人が数多く生み出されたこの島では、聞こえる聞こえないに関わりなく、誰もがごくふつうに手話を使って話していた。耳の不自由な人も聞こえる人と全く同じように大人になり、結婚し、生計を立てた。障害をもつ者ともたない者の共生―。この理念を丹念なフィールドワークで今によみがえらせた、文化人類学者の報告。
目次
1 「ほかの人間とまったく同じだった」
2 マーサズ・ヴィンヤード島の歴史
3 ヴィンヤード島の聴覚障害の由来
4 ヴィンヤード島の聴覚障害の遺伝学
5 聴覚障害への適応
6 島でろう者として育つ
7 歴史的にみた聴覚障害
8 「あの人たちにハンディキャップはなかった」
感想・レビュー
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