内容説明
高知生まれの自由民権思想家。明治国家建設にあたり、『民約訳解』などルソーの厳密な翻訳を著し、フランス革命の文明論的原理を追求、フランス学派の代表と目された。民権理論の中核にありながら運動ではほとんど常に孤立。野党統一を求めつつ果たせなかった、奇人として知られる彼の理想とは何だったのか。挫折と苦悩の生涯を大胆かつ精密に描く。
目次
第1 幕末の土佐
第2 遊学時代―長崎・江戸・兵庫・東京
第3 フランス
第4 思想家の誕生
第5 東洋のルソー
第6 第一議会
第7 「兆民居士安くにかある」
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
denz
2
本書を読むと、この人物を「中江兆民」と呼ぶよりも「中江篤介」と呼びたい感じになる。もちろん、他書でも述べられているが「兆民」を名乗り始めたのは一八八七年の四一歳の時。五五歳で死に、最晩年の『続一年有半』も自署は「中江篤介」である。本書は思想家として自立して以後は「兆民」と呼ぶが、思想家というよりも第二の龍馬たらんとした一人物の伝記を描くことを基本姿勢としている。彼が「利権ブローカー」にまで身を堕してまで何を目指したかは本書でも謎のままだが、思想家として読むよりも明治の一人物としての中江篤介は魅力的である。2011/12/15
Ikkoku-Kan Is Forever..!!
1
兆民について調べる前提としてとりあえず読んだ。筆者(飛鳥井雅道先生)は兆民が好きなんだなあと。「原語のままで『思想の純粋性』を追求するか、単なる翻訳でなく、『思想の翻訳』を求めて日本語・原語の緊張関係を意識しながら向かい合うか。」ってとこが感動した。これから、実際に兆民全集を読んでみるけど、そういう、圧倒的な西欧文明というものに真正面から向き合った開化期の知識人の葛藤の軌跡をあたしのようなものでも少し垣間見ることが出来る。日本史の素晴らしさだなあと。2011/06/25
i-miya
1
足軽の子京都大学 幸徳秋水 兆民宅に暮らす <萩原三圭> 細川潤三郎の弟子 医学は緒方洪庵に学ぶ 文武館(ぶんぶかん) 岩崎弥太郎 中江篤助 助をきらう 篤介 谷干城 後藤象二郎 吉田東洋 義理の甥 平井収二郎ー切腹 おおぼらふきで有名だった後藤象二郎 二. 江戸、横浜、兵庫 達理堂 村上英俊の塾 しかし、古風 フランス学の始祖 馬場辰猪 足軽と御馬廻の格の相違 <横浜天主堂> 長崎のプチジャン神父 神戸事件、堺事件 慶応4.01.11、2/15 三. 東京へ 日新社ー福地源一郎 湯島天神下2008/05/13
あだこ
1
距離はとりつつも、兆民への愛がこめられて書かれている最良の兆民の伝記。2009/06/29