出版社内容情報
【内容紹介】
ひとつの土器片が、少年の目を黎明期時代に向けさせた。行商のかたわら赤城山麓周辺の遺跡を踏査し、遂に関東ローム層中の石器文化(岩宿文化)を発見、日本における旧石器文化研究の新分野を開拓した男の不屈の人間記録。1961年群馬県功労賞、1967年岩宿発見の功績により吉川英治賞受賞。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
コーデ21
28
《行商のかたわら赤城山麓周辺の遺跡を踏査し遂に関東ローム層中の石器文化を発見した相沢忠洋の不屈の人間記録》 逆境にありながらも、当時否定されていた日本列島の旧石器時代の存在を知らしめた相沢さんの熱意&行動力に感動しました。度重なる裏切りなどにも屈することなく突き進むなか「火を囲んでの一家団らん」への渇望が心の拠り所となっていたという箇所では思わずジーン😢 学術書でも啓蒙書でもない、相沢氏の心の彩がストレートに伝わる名著☆考古学に興味のない人にも手にとっていただきたい一冊です。2024/01/29
ムーミン2号
11
日本に旧石器時代があったことを証明した岩宿遺跡は、民間考古学者であった相沢忠洋氏によって発見され、明治大学とともに発掘してその存在が認められた。本書はその記録であると同時に、相沢さんの生い立ちから「岩宿」の発見にいたる軌跡が静かに語られている。随分つらい目に遭われているが、本書に悲壮感は感じられない。多分、相沢さんがオブラートに包みながら記しているためだろう。単に「岩宿」の発見というよりは、人間・相沢忠洋の発見の書であるように感じた。2020/07/08
あかつや
11
岩宿遺跡を発見し、それまで日本にはないと考えられてきた旧石器時代の存在を証明した著者の自伝。幼少期から遺跡の発見まで。この人はあくまで市井の人で、大学で学問を修めたわけではなく、行商で日々の暮らしを立てる傍ら時間を見つけてコツコツと積みあげていく。どの業界でも、こういう損得抜きで己の情熱を傾ける人がいるからこそ全体の水準が上がるんだよなあ。立派な人だ。遺跡の発掘についての部分も興味深いが、そこに至るまでの、特に幼少期の所が戦前・戦中の生活史として面白い。生き別れの母と再会する場面なんて実にドラマチックだ。2019/09/29
活字の旅遊人
9
前野ウルド氏に触発された再読第二弾。小学校の図書室で子ども向けの本を借りたんだった。考古学者になりたかった日々を思い出す。 かつての本にあったかは覚えていないけれど、相沢さんの幼少期からの苦労と、発見後のごたごたが、30年以上経過して再読したおじさんにはしみいってしまう。大人の世界はやっぱり純粋じゃないんだよな。 そして、まだ岩宿を訪ねていなかったことを思い出す。両毛線に乗ったときにも、忘れていた。まだ、やりたいことがあるよね、僕も。2020/11/22
つちのこ
8
講談社文庫版。初読は1973年頃。考古学に興味があった中学生の頃に初めて読んだ。その時から岩宿遺跡という名称がインプットされ、発見者の相沢氏が納豆売りをしながら関東ローム層で発掘作業をしていたエピソードもずっと記憶に残っていた。2020年に本書を久しぶりに再読し、いてもたってもいられなくなり群馬県の岩宿遺跡を訪ねることにした。資料館で夢にまで見た、相沢氏が発見した黒曜石の尖頭石器を目の当たりにしたとき、長年の宿題を終えたような、そんな感動を味わうことができた。2020/04/24