内容説明
日本人をも魅了し続ける、三国志。しかし、『三国志演義』や、それを下敷きにした小説・ゲームの世界は「虚構」に満ちている。また、「正史」と呼ばれる歴史書の『三国志』も書き手の偏向がつきまとう。本書は、一般に親しまれている『演義』を入り口に、「正史」の記述を検討。そして、史実の世界へと誘う。暴君董卓の意外な美点、曹操が文学に託したもの、劉備と諸葛亮の葛藤―あなたの知らない三国志がここにある。
目次
第1章 演義と正史―それぞれの限界
第2章 二袁の真実―「漢」の重みと簒奪
第3章 「奸絶」曹操―変革者の実像
第4章 悲劇の国、孫呉―道化とされた男たち
第5章 「義絶」関羽―神となった英雄
第6章 「智絶」諸葛亮―劉備とのせめぎあい
第7章 分かれれば必ず合す―三国志の終焉
著者等紹介
渡邉義浩[ワタナベヨシヒロ]
1962(昭和37)年、東京都生まれ。筑波大学大学院博士課程歴史・人類学研究科修了。文学博士。現在、大東文化大学文学部教授。専門は中国古代史。三国志学会事務局長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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優希
112
内容は副題にある通り、そのままでした。三国志の世界を演義、正史、史実と比較しながら語っています。流れを追うのではなく、人物に焦点を当てながら時代背景を探るというのが興味深かったです。これを踏まえて三国志を読もうと思います。2017/01/16
こきよ
57
正史と演義は似て非なるモノ…物語としては演義の方が面白いのはまあ当たり前ではあるが、正史などと大仰に言ったところで所詮勝者の方便であるのだが。2015/08/08
Tomoichi
35
面白い。サブタイトル通り演義・正史・史実をうまく比較しながらまたそれぞれの時代の解釈や朱子学など儒教の影響など三国志の通史を検証していく。新書なんで仕方ないが、もう少しヴォルームがあってもいい。先日読んだ文春新書の三国志ものには著者のイデオロギーが入りすぎていたがこちらは実証的でさすが三国志の専門家って感じで好感が持てる作品でした。2018/07/28
かごむし
33
内容は副題の通り。青春時代に吉川三国志に出会った僕にとっては、三国志の舞台は一つのふるさとでもある。物語色の強い演義に比べて、正史は正しいことが書いてあると思っていたが、正史とは「正しい歴史」ではなく「(晋を、また、禅定により皇帝位を譲られた魏を)正統とする歴史」だから、陳寿の正史にも偏向がある、という指摘は重要な視座であった。中国で一番普及している三国志と吉川三国志は、大本にしている版が異なるため、関羽の扱いが全然違うことや、史実の曹操は中国史上屈指の革命家だという話など、三国志好きに勧める一冊である。2016/12/17
ゲオルギオ・ハーン
28
『三国志』といっても書かれた時代や著者の伝えたいテーマによってさまざまな作品がある。本書はそうした派生について整理し、演義が伝えたかったこと、正史の狙い、そして史実を紹介して歴史的かつ有名な歴史小説の形成を説明してくれる。三国志は好きだが、史実について整理できていなかったので腑に落ちなかった点をいくつも解消してくれたのはとても嬉しかった。諸葛亮と荊州名士閥について書かれたところが面白い。荊州で代々郡の長官をしていた血筋で荊州学をよく修めた人物である諸葛亮の加入後に劉備軍の人材が充実するのも納得。2021/10/06