出版社内容情報
人間関係のしがらみや「強制された自発性」に絡めとられながら、限界をこえるまで働くふつうの労働者たち。膨大な数の過労死・過労自殺の事例を徹底的に凝視した本書は、現状を変えていくための、鎮魂の物語である。
内容説明
企業社会のしがらみや「強制された自発性」に絡めとられながら、限界をこえるまで働くふつうの労働者たち。そのいびつな社会構造は、今も過労死・過労自殺で斃れる人びとを生み出しつつある。日本を代表する労働研究者が、膨大な数の事例を徹底的に凝視することで日本の労働史を描き出した本書は、現状を変えてゆくための、鎮魂の物語である。
目次
1章 過労死・過労自殺―ありふれた職場のできごと
2章 トラック労働者の群像
3章 工場・建設労働者の過労死
4章 ホワイトカラーとOLの場合
5章 斃れゆく教師たち
6章 管理職と現場リーダーの責任
7章 過労死の一九八〇年代
8章 過労自殺―前期の代表的な五事例
9章 若者たち・二〇代の過労自殺
10章 ハラスメントと過重労働のもたらす死
終章 過労死・過労自殺をめぐる責任の所在
著者等紹介
熊沢誠[クマザワマコト]
1938年三重県生まれ。労働研究者。甲南大学名誉教授。経済学博士。研究会「職場の人権」を1999年に設立、2012年まで代表、現在は顧問(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ポルターガイスト
3
これでもかと実例を述べてそこから共通する過労死の要素を抽出しようとする帰納的なルポタージュ。個人的にはこういう描き方は好きだし,事例ごとに職業や背景が変わるのでそう飽きはしなかった。過労死の実例集を求めていたのでとても助かりました。データは少し古いが,まあ,本質は変わらない。2022/09/22
Yoshiko
1
50の事例について、裁判資料などをもとに、本人も言うように執拗に細かく記述し、その中から日本の労働者の「強制された自発性」をえぐり出している。経営側による質量共に過重な労働の押し付けだけでなく、行政や労働組合の責任も指摘し、「会社のため」と「自分の生活のため」を分けられない労働者自身の内面にも踏み込んでいる。ここまで犠牲者を出しながら表面を繕ってきた日本の経済は、ここにきてようやく、低賃金と生産性の低さという課題に注目が集まるようになった。日本経済を立て直したいなら本書の指摘に正面から向き合うべきだ。2022/06/30
たい
0
過労死、過労自殺の事例集として読んだ。壮絶な労働の中で、短期間で、あっけなく死んでしまう人々。彼らが死に瀕しつつも働こうとする際の論理は聞き覚えのあるもので、他人事ではない。そこまでして働く必要がないはずだった、という点も含めて。翻って、どうすれば彼らを止められるのだろうか。2023/11/13
バツ丸
0
★★★。労働問題・産業労働社会学の大家による渾身のルポ。大学時代の卒論の際、この著者の作品に最も感銘を受け、論の核として参考にしたこともあり、今なお自身の労働観や会社観に甚大な影響を与え続けている。そういうこともあり期待して読んだのだけれど・・・。膨大な過労死事例の収集と詳細な調査、過労死を生み出した企業への厳しい批判にはただただ頭が下がるが、それがあまりに膨大すぎて読んでいる途中で飽き、食傷気味になってしまうのが難点。完全に研究者向けの内容で一般人にはお勧めできない。2020/05/12