内容説明
昼間働き夜学ぶ、定時制高校の生徒たちが指折り数えて詠いあげた31文字。技巧も飾りもない、ありのままの思いがこめられている。働く充実感と辛さ、生きる喜びと悲しみ、そして自分の無力への嘆き。生き難い環境の中で、それでも生き続けようとする者たちの青春の短歌。
目次
1 不登校、ひきこもりから定時制高校へ
2 短歌が引き出すもの
3 厳しい労働現場から
4 生きるつらさを詠う
5 友の支え、ひとへの思い
6 卒業できなかった生徒たち
7 友を喪う歌―震災を経験して
著者等紹介
南悟[ミナミサトル]
1946年兵庫県西宮市生まれ。日本大学文理学部国文科卒業。尼崎市福祉事務所ケースワーカー3年を経て、1974年より兵庫県高等学校国語教員。兵庫工業高等学校に5年、1979年より神戸工業高等学校(夜間定時制)に勤務し現在にいたる(2007年に定年退職後は再任用)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新地学@児童書病発動中
96
「生きていくための短歌」というタイトル通りの本だ。定時制高校に通う生徒たちが、苦しく辛い生活の中から生み出した歌が数多く収めれている。歌人になろうとか、有名になろうとかそういう気持ちは微塵もなくて、生き抜くために書かれた歌なので、読み手の胸の一番深いところまで届く。単なる歌というより、高校生たちの命の一部だと言う気がした。本書に出てくる多くの高校生たちが零細企業で働いている。そのような職場の環境は厳しい。それでも彼らが必死に働いているので、世の中が支えられているのだろう。→2016/12/25
禿童子
40
働きながら学ぶ定時制の高校生たちの短歌とはという軽い気持ちで手に取ったらとんでもない!毎ページ繰るたびに涙がこみあげて読み進むのに苦労した。長年見守ってきた先生が生徒たちの人生を短歌とともに語る本だった。中学までの不登校、非行、父母の離婚や神戸の震災孤児...言葉にならない不幸と苦難を乗り越えようと定時制に通う、子供とは言えない年齢の生徒もいる。日々の想いを五・七・五・七・七の短歌にすることを指導する筆者の生徒たちとの交流。一首だけ引用:「母が死に父は失踪兄と俺夜学四年目今生きている」古木晴久(1996)2020/09/29
ヴェネツィア
10
神戸工業高校定時制(夜間)の生徒たちが詠んだ短歌を中心に構成されている。個々の歌はかならずしも上手ではないのだが、実感から発しているだけに、時には技巧的な歌には見られない力に溢れている。 先生の生徒たちに寄せる共感には頭が下がる。2012/01/30
y
8
図書館で目に留まった。南悟先生。大学時代お世話になった教授だった。慌てて借りた。先生がどんな気持ちで私たち学生と向き合ってくれていたのか、とても胸がいっぱいになった。いっぱい読み返せるように、すぐに買いに走った。2020/05/28
今庄和恵@マチカドホケン室/コネクトロン
4
なぜ俳句ではなくて短歌なのか。この疑問がずーっとなくならなくてですね。過酷な生活をおくる高校生たちに、「生きていくために」短歌を書くことをすすめた先生。短歌を書くことで生きていく力をつけられるのなら、短歌を作ることで生きていけるのなら、私も短歌の力を借りたい。2013/07/25