内容説明
なぜ今も経済の停滞が続くのか、本当に雇用は回復したのか、金融緩和でデフレからの脱却は成功したのか、格差は広がっているのか…安倍政権と黒田日銀による経済政策を徹底検証。まやかしの「成果」のからくりを暴き、アベノミクスを鋭く批判する。その先に、経済学が果たすべき役割が見えてくる。
目次
第1章 低成長が続く日本経済(混迷する黒田=岩田日銀;停滞する日本経済;機能しない異次元緩和;日本だけの経済停滞;世界大恐慌の再検討)
第2章 雇用は増加していない(実体経済、雇用、労働生産性の低迷;労働生産性のゼロ成長)
第3章 デフレ脱却という神話(輸入インフレの終焉;日本銀行は責任を転嫁する;誤った経済学は失敗を繰り返す)
第4章 広がる格差(企業業績の急回復、それが問題だ;アメリカ経済の何が「回復」しているのか;実態なき「回復」)
終章 アベノミクスとポスト真実(経済学の「裏の歴史」;経済の危機は経済学を進歩させる)
著者等紹介
服部茂幸[ハットリシゲユキ]
1964年大阪府生まれ。1988年京都大学経済学部経済学科卒業。96年京都大学博士(経済学)。現在、同志社大学商学部教授。専攻、理論経済学(マクロ経済学、金融政策)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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KAZOO
97
まじめに経済政策を考えている人からすると、安倍内閣というのはこの表題や・中身どおりになるのでしょう。やはり批判しても賛成しても商売になるわけですね。消費税対応でうそつき安部というのはわかっているので、最近の状況もあまり気になりません。政治家ではなく自分の評判を気にするだけのタレント人間ですから。地道に分析している本で統計の見かた等は参考になります。2017/05/30
ゆう。
29
安倍政権の支持率が低下するなかで、もう古くなった感もあるアベノミクスという言葉。本著は、そのアベノミクスの偽りの真の姿を明らかにしようとした良書です。国民生活は一向に向上せず、実体経済が伴わないなかで唱えられているアベノミクスは、明らかに失敗といえます。著者はアベノミクスの真の姿は、デフレ脱却にも実体経済の回復にも失敗しており、就労者の増かも短時間労働者が増えただけで雇用が壊されていることを指摘しています。学ぶことが多かったです。2017/08/04
coolflat
24
アベノミクスの成果としてよく取り上げるものの一つが、雇用の回復である。確かに数字を見れば雇用は回復している。しかし中身をよく見ると、実際増加しているのは短期間就業者(女性・引退世代・非正規)であって、長時間就業者(正規)は逆に減少している。一人あたりの就業時間が短くなったため、延べ就業時間は微減か、横ばいである。加えて、労働生産性の上昇率がほぼゼロとなっている。これが生産の拡大なき雇用増加の実態である。ただ、雇用は増加している。しかしこうした形による就業者の増加は、実はアベノミクスの成果でもないという。2018/06/20
さきん
23
リフレ派の金融政策だけで何とかいけるという理屈がおかしいのはその通りと思うのだが、消費税増税の影響や財政政策の影響を過小評価しすぎているきらいがあった。確かに2013年の後半に至っても景気が良くなっている数字は出ていなかったがデフレーターを見れば、消費税の直前まで数字が上がり続けていたことは事実。失業率も非正規の割合が高く、低賃金雇用が多いのが、残念なことだとは思うが、金融政策が影響を与えていないわけではない。そして最後には、著者の考える政策を語ってもらいたかった。2018/11/25
skunk_c
19
前著『アベノミクスの終焉』の続編で、最近の経済統計の分析を通じ、特に黒田・岩田日銀体制の「インフレ目標」が殆ど成果を上げていないことを論証している。特に岩田規久男に対する批判は容赦なく、度重なる目標期限延長や、過去との発言の違いを指摘してこき下ろしている。ただ、気になるのは結局この著者も経済成長を目標にしていると思える点。高齢化した人口減社会の中で、格差の拡大は勘弁して欲しいが、成長は絶対必要なのだろうか。このあたりに多くの経済学者との共通点を感じた。本書に適切な処方箋が見当たらないのもそのせいかも。2017/06/18