感想・レビュー
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夜間飛行
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明治から昭和初期までに活躍した28歌人を通して短歌史を俯瞰する。それによって受け継がれるものと反発し合うものが見えてくる。浪漫派や自然主義派も興味深いが、最も心惹かれるのは子規からの流れである。子規は写生の俳句から出発し、不治の病を抱えながら《瓶にさす藤の花ぶさみじかければたたみの上にとどかざりけり》など人間性に根ざした歌を淡々と詠み続けた。これを左千夫、節、赤彦、茂吉らが継承発展させていく所に根岸派の流れがある。アララギという大樹の若木ともいえる子規の歌は、未完成ながら可能性に満ちているように思われた。2014/12/29