出版社内容情報
日本は同性愛者に寛容というのは本当か。ある殺人事件やエイズ問題、公的施設の利用拒否事件などを題材に、異性愛社会に染み付いたホモフォビア(同性愛嫌悪)の諸相を描く。性的マイノリティが肯定的に生きられる社会への提言。
内容説明
日本は同性愛者に寛容というのは本当だろうか。なぜ「見えない」存在なのか。エイズ問題や公共施設の利用拒否事件、ある殺人事件などを題材にしながら、異性愛社会に染み付いたホモフォビア(同性愛嫌悪)の諸相を描き出す。また、同性愛者が肯定的に生きていくための取り組みも紹介。同性愛者から見た、もうひとつの日本社会論。
目次
第1章 エイズ・パニック
第2章 法廷に出された差別
第3章 歴史のなかの同性愛者たち
第4章 ホモフォビアと異性愛主義
第5章 性的マイノリティとは何か
第6章 親密であるということ
著者等紹介
風間孝[カザマタカシ]
1967年群馬県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得満期退学。現在、中京大学国際教養学部准教授。専攻は社会学、ゲイ・スタディーズ
河口和也[カワグチカズヤ]
1963年愛知県生まれ。筑波大学大学院博士課程社会科学研究科単位取得満期退学。現在、広島修道大学人文学部教授。専攻は社会学、ゲイ・スタディーズ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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匠
148
世の中は異性愛が「普通」で当たり前だと認識されているから、異性を好きになる人は自分の性指向に疑問を持つことすらほとんどないと思う。本書は男性の同性愛を中心に、男色や衆道と同性愛の違い、なぜ「異常」とみなされるようになったのか、エイズパニックや青年の家の宿泊拒否事件や「ホモ狩り」での撲殺事件など、これまでの裁判など含む歴史を紐解きつつ、欧米と日本との違いや世間一般からの偏見と誤解がわかりやすく解説されている。1980年代から90年代を中心にした出来事と、性的マイノリティのごく一部のことしか(コメント欄へ⇒2014/04/10
GAKU
59
2010年に出版。同性愛に関して世の中はどのように対してきたのか。同性愛者が被った数十年の歴史と、その時々に起こった事件。そして現在(出版当時)の状況、これからどのような社会になってほしいのか、自身も同性愛者である学者によって書かれた1冊。数十年前に比べたら、同性愛、同性愛者は多少は受け入れられている社会にはなっているのだろうが、まだまだ当人達にしてみたら生きづらいのではないかと感じた。⇒ 2018/11/09
Koning
32
同性愛を巡るさまざまな問題を単に同性愛だけでなく異性愛とも比較しつつAIDSを巡るあれこれ、府中の青少年の家の法廷闘争、夢の島のハッテン場の殺人事件等を見ながら日本の同性愛問題というかマイノリティーに対する無関心からの差別や虐待というものをきっちり書けてるかなー?と。それぞれの事件での社会(特にマスコミの報道)の反応なんかは事こういう話だけじゃないと思わされたり。海外の(特にアメリカのストーンウォール事件やハーヴェイ・ミルクの話を例に)闘争的な権利獲得を紹介しつつもじゃぁ日本は実際の所どう?(続2013/08/22
耳クソ
21
一五三三年、イギリスのヘンリー八世は同性愛者を死刑にする法制度を「自然に反する犯罪」として制定した。本書はエイズ問題や性別適合手術の問題で、同性愛を「医療」化する際に潜む「自然」の無自覚な差別性を批判する。その代替として法制度における権利取得を差別克服の道筋として捉えているが、シティズンシップの場において条文や発言を書き換えさせるだけでは、異性愛者が自身のセクシュアリティを省みることなく同性愛者を「理解」し「承認」するという非対称性は変わらないのではないか。あと男色文化の記述には難ありである。2022/12/11
ケー
20
以前読んだ『LGBTを読み解く』が理論編ならば本著はその実践編といった感じ。HIV、裁判、メディアを、通して主に日本においてどのような変遷を辿っていったかが綴られている。巻末のブックガイドも参考になる。同性愛、異性愛、どちらも自明のことじゃない。あんまり新刊書店で見た覚えがないけれど(9年前の本なので仕方ないといえば仕方ない。岩波新書でもあるし)、もっと世に広まって欲しい本。2019/03/17