出版社内容情報
シリーズ解説:
「彼を知りえたことは私の生涯の中で最も刺激的な知的冒険の一つであった」という B・ラッセルの証言を引くまでもなく、ウィトゲンシュタインの哲学的思索の軌跡は、二十世紀の知的世界が遭遇した一つの事件であった。比類のない分析力のおもむくところは、論理的に完璧な言語の構想から、具体的な語の使われ方に文法を見出そうとするところにまで及び、考察の照準は、一貫して言語の批判に向けられていた。
内容説明:
具体的言語行為の考察
ウィトゲンシュタインは、後期思想がようやく明確な形をとりはじめたころ、『哲学的文法』と題する著作を準備したが、ついに刊行することはなかった。本書は、その手稿の第一部「文、文の意味」の全訳である。ある文を理解するとはどういうことか、何ものかが有意味な記号でありうる条件は何か。この主題を考察するにあたって彼のとった態度は、一貫して、生きた言語の使われ方、はたらき方そのもののなかに「文法」の基盤を見いだそうとすることだった。本書は、その困難な道を切り開いていった記録である。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
roughfractus02
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「理解する」ことは言語使用の問題である。著者は、言語の理解は意味ではなく、聞いたことがあるか、読んだことがあるかにかかっているという。逆を言えば、聞いたこともない言語は理解できず、見たこともない文字も理解不能ということだ。聞くことや読むことで理解するということは、いかに言語を使うかを知っているという点に依存する。一般に意味を明確に整除する条件が文法なら、著者のいう文法は意味が成り立つ際の条件である。著者は言語理解を言語学や心理学からでなく、言語行為から捉えた。この巻は『文法』前半の「文、文の意味」を収録。2017/02/09